▼夫婦が里親になったわけ
ともやさんとあきこさんには、2人の間に生まれた長男がいます。子どもが大好きなあきこさんは、きょうだいがほしいと考えていましたが、長男を出産したとき、2人は30代後半。体力的にも厳しく諦めざるをえませんでした。
あきこさんが里親制度を知ったのは、長男が小学校3年生のときです。テレビで知って「やってみたい」と強く思ったあきこさん。長男が二十歳になるまで待って、家族に相談。ともやさんも長男も受け入れてくれました。

里親になるための研修などを経て、かずまくんとの交流が始まったのは、2023年の秋でした。
始めは日帰りで1日を共にするだけでしたが、1年が経ったころから1泊するように。そして今回、冬休みに初めて3泊の長期滞在に挑戦したのです。
▼口数少ないかずまくんの「サイン」
あきこさん
「いつもは朝起きてきて、『おはよう』って私が言っても返事がないので『おはようは?』って聞くんですけど、2泊目の今日は『おはよう』って自然と返ってきたので嬉しかったです。」
ささいな変化ですが、かずまくんが生活になじんだサイン…。あきこさんは嬉しそうに話します。
家庭で過ごすお正月もかずまくんにとっては貴重な体験です。元旦の食卓には、くわい、黒豆、煮染め、栗きんとん、紅白なます…と、色とりどりのおせち料理が並びました。

一方でこれまで食べてきた施設のおせち料理は、栗きんとんやなますなどにウインナーや焼き鳥を並べた「子ども向け」のもの。かずまくんは「家族のおせち」を、珍しそうに見ていたといいます。
あきこさん
「『くわいは芽が出るようにって食べるんよ。』とか、説明ができるものは説明したりして。紅白なますは酸っぱいから嫌いな様子で、煮染めも野菜が多いから嫌だったみたいで残していました。手作りだったのに!(笑)でも、夜はカレーにしたら、おかわりまでしてくれたんです。完食でした。」
口数の少ないかずまくんから、「おいしい」は聞けていないと言いますが、完食やおかわりが美味しく食べたサインです。