スマホはおろか携帯電話がなかった時代、1979(昭和54)年に「元祖ケータイ」とも言えるものが登場しました。「シモシモ〜」の前。エグゼクティブのための「自動車電話」の登場です。(アーカイブマネジメント部 疋田 智)

ケータイの元祖・自動車電話(車載電話)

実用可能な自動車電話サービスが東京で開始されたのは1979年12月のことでした。
それまでの移動体通信は、交換手を通すものか、基地局なしのトランシーバーのようなものだったのですが、この自動車電話が画期的だったのは、プッシュボタンを押せば一般の加入電話とも相互にかけられることでした。
ここから現在の携帯電話に通じる技術がスタートしたのです。

1979(昭和54)年12月3日、賑々しい記者発表の日にスタートしたのが現在のケータイの元祖でした。

自動車電話開通セレモニー

当時の映像を振り返ると、電電公社(NTTの前身)の総裁がプッシュホンを押し、あらかじめセッティングされたクルマに電話をかけています。
人気タレントの中村メイコさんが総裁からの電話を待ち受け「良い声ですわよ」と受けるという演出です。

記者会見の最中に実際に繋げてみせました。JNNニュース(1979年12月3日)より。

この、いかにも昭和らしい演出の記者発表から、現在のスマホにつながっていく技術革新がスタートしたのです。

エグゼクティブご用達

ただしハードルとなったのは費用でした。
自動車電話は機器が電電公社からのレンタルで、保証金が約20万円、月額基本料3万円、通話料(近距離)6秒10円かかりました。通話料だけで1時間6,000円。東京都の最低時給が382円の時代ですから、相当に高価だったわけです。

自動車電話は1時間通話すると6000円。市内通話で、です。そういう意味では今はいい時代になりました。

だから自動車電話を使うのは大企業の取締役か、政治家、不動産長者などばかり。
高級車の後席で、自動車電話を片手に「いま、クルマの中からなんだが、〇〇の件はうまくいってるのかね」というとき、昭和のエグゼクティブは「エリート恍惚感」に酔いしれたといいます。