酒を飲んだ状態で車を運転し、車いすに乗った高齢男性をひき逃げした罪に問われている男の裁判。山口地裁で開かれた初公判で男は起訴内容を認め、検察側は「代行運転を利用する金を惜しんだ」と指摘しました。

ひき逃げなどの罪に問われているのは、山口市の飲食店経営の男(45)です。

起訴状によると、男は2024年11月10日未明、山口市の市道で酒を飲んだ状態で乗用車を運転し、車いすに乗った男性(当時73)をはねて死亡させ、飲酒運転の発覚を免れようと、その場から逃げたとされます。

山口地裁で開かれた初公判で、男は「間違いありません」と起訴内容を認め、検察側は冒頭陳述で「代行運転を利用する金を惜しんで飲酒運転した」と指摘しました。

事件前日の11月9日、男が経営する居酒屋に、専門学校時代の同窓会に参加した友人や後輩が来店しました。男は営業終了後の午後10時半から翌午前2時ごろまで、店で友人らとビールや焼酎を飲んだにも関わらず車に乗り、時速30キロ制限の道を時速60キロで運転して事故を起こしましたが、飲酒運転の発覚を免れようと現場から逃走したとしました。

車いすの男性は、左足に障害があり、車いすごと道路脇の河川敷に転落。10日早朝、ジョギング中の男性から「携帯がないので通報してほしい」と呼び止められた通報者が警察に通報しました。駆けつけた警察官が、現場で車のエンブレムが落ちているのを発見。動物の走る形が摸されたエンブレムは、海外の高級自動車のものとして有名でした。警察官は、このブランドの車が男の自宅にあることを知っていたことから男の自宅を訪れ、フロントのエンブレム部分が欠けているのを確認。自宅から出てきた男に職務質問したところ、ひき逃げを認めたといいます。男は以前にも、飲酒運転をするなどして摘発されていたということです。

検察側によると、亡くなった男性の姉は「せめて通報してほしかった。寒くて暗い中、1人で苦しみながら死んでいたと思うとかわいそう。まだ死を受け入れられておらず、寅さんみたいに突然ふらっと帰ってくるのでは」と話しているといい、「一生忘れないで、罪を償ってほしい」と読み上げました。