ポイントは、画面の奥行きを引き出す工夫

撮影テクニックがネットで手軽に学べる時代になり、誰もがそれなりの写真や動画を撮れる時代。それでも、多くの人々を魅了する作品を生み出せるプロのカメラマンは、何が違うのだろうか? 撮影哲学を掘り下げると、その核心が見えてくる。
映像作品では、バストショット(上半身から上)やロングショット(全身を含めた引きの画)といったカット割が決められた中で、カメラマンがどう世界を切り取り、構図や動きをどう組み立てるかが問われる。加藤氏は「“何のシーンか、何がテーマか、誰のシーンか”が伝わる画を撮ることを大事にしている。細かい部分は後からついてくる」と語る。監督の意図を汲みつつ、自ら新しいアングルを提案し、シーンの魅力を引き出す姿勢が、プロならではの特徴だ。

『地獄の果てまで連れていく』では、俳優たちによってキャラクターの気持ち悪さや人間の恐ろしさが見事に表現されていたので、いかにも復讐劇というようなおどろおどろしい雰囲気の画作りでこわさを見せるのではなく、あえて綺麗な映像で美しい復讐劇として映し出すための撮り方を意識した。「軸をしっかりと決めて画作りをすれば、他の多くの作品と差別化できる」と話す。
この考え方はスマホ撮影にも応用できる。
「まず何を撮りたいかを明確にすること。たとえば、テレビとスピーカーを撮るのであれば、どちらを撮るのか、それとも両方なのか。さらに、どう見せたいかを考える。例えば液晶テレビなら、正面から撮るか、下から煽るか、形の面白さを引き出す角度を探る。対象物の見せたいポイントが決まったら、アングルは自ずと決まってきます」。
加藤氏が強調するのは、「画面がフラットにならないように奥行きを出す」こと。手前に対象物、奥に背景を配置するだけで、写真や動画に深みが生まれる。少しの工夫で日常の一コマがドラマティックに変わる。センスを磨きたいなら、このプロのポイントを試してみる価値は十分にある。