「助けられる人を助けないかん。もう助からない人はあきらめな」
当時、3年目の内科医で、この日は当直明けだった水谷さん。ある傷病者への心肺蘇生に加わりましたが、「救命は厳しい」と薄々感じたといいます。
(水谷和郎医師)「ちょっと難しいなという状況にはなっていたんですが、どうしたらええんやろなと。心肺蘇生をやめた段階で、その人が亡くなることになるので、地震という理不尽な状況で、どうしたらええんやろ、やめていいんやろかというのは、自分の中ではすごく葛藤があって」
生死の境界線を引く過酷な決断を前に生じた、ためらい。そんな時、ひとりの医師の声が響きました。
【当時の映像より】
(松田昌三医師)「やることやってあかんかったら、次の人を助けなあかん。あのね、いまのお話やったら心臓が止まって呼吸が止まって20分経っていますから、この方の蘇生は困難です。もうやめ。次の人に行かなあかん。やめ」
現場の指揮をとっていた外科部長の松田昌三さんが、蘇生を中止するよう命じたのです。
(松田昌三医師)「とにかくね、助けられる人を助けないかん。もう助からない人はあきらめな。この人もう何分ぐらいかわかる?」
(救急隊員)「9時に現場到着してから15分程度のCPRを実施して…」
(松田昌三医師)「やめなさい。ストップ!次の人にかかろう」