県内唯一の震災遺構「指定管理者制度」導入
こうした中、去年10月、この指定管理者制度を導入し、町から民間企業に運営を委託した施設があります。県内唯一の震災遺構・浪江町の請戸小学校です。震災からまもなく14年。あの日の記憶をありのままの姿で伝え続けています。

太見洋介さん「震災遺構として減災・防災を伝えながら、浪江町そして請戸地区のこれまでの歴史や文化というのを伝えていきたいと思っている」
去年10月から請戸小学校の運営を行っている宮城県多賀城市のNPO「海族DMC」代表の太見洋介さん。福島市出身の太見さんは、県内の大学を卒業後、大手不動産会社に勤務し、駐在員として東南アジアを中心に商業施設の建設や運営管理などを行ってきました。

そんな太見さんが帰国するきっかけになったのが、震災です。
太見さん「宮城県の自宅が津波で全部飲まれてしまったっていうことと、あとは実家の福島もやはり風評の被害が海外で働いている時も聞こえていたので、海外で仕事を続けるよりは、地元に帰って地域沿岸部の町おこし、地域の復興に臨んでいきたい(と思った)」
震災後、ボランティアで行方不明者の捜索などに取り組んできた太見さん。その後、自治体と連携して地域振興にも取り組み、おととしからは宮城県名取市と鹿児島県南さつま市の2つの施設で、指定管理者として運営を担っています。
太見さん「全国でそういった活動をしてきて、国内と世界にも色々ネットワークをいま持っているので、世界に対する請戸小学校、あるいは福島県の現状を多くの方に知ってもらうという意味では私たちは貢献できると思う」

請戸小学校は、昨年度、開館以来最も多いおよそ6万4000人が来館しましたが、経営面では、年間400万円を超える赤字となっていて、厳しい状況が続いています。太見さんは今後、外国人向けの情報発信の強化に取り組みながら、まずは請戸地区の歴史や災害の教訓を広く発信していきたいと話します。

太見さん「福島の人間として、震災遺構の仕事を受けられるというのは本当に私としては非常に大きなことですし、ただやはり請戸の方の思いが一番大切なので、しっかり地域の方とコミュニケーションを取りながら、少しずつ防災・減災につながるような企画を展開していければいいなと思う」
震災からまもなく14年。記憶の風化が避けられない中で、伝承施設がどうあるべきか、模索が続いています。