■「最後だから顔見てあげて。」泣き崩れた安田さん

恵介さんの母親が声をかけます。「最後だから顔見てあげて。」恵介さんと対面した安田さんは、泣き崩れました。脳裏に浮かんだのは、地震2日前の1月15日の成人式のこと。安田さんは恵介さんらと成人を祝い、こんな会話をしていました。

――証言をもとに当時を再現
「いろいろ考えるよな。このままおっさんになるのかとか、なんか寂しいよな。裕己、お前おもろいねんから芸人になれよ」(山口恵介さん)
「そんなもんなれるわけないやろ」
「いけるって。お前吉本にいけって。お前は絶対に芸人になれる!なれへんかったら後悔するぞ」
「芸人になれ。」いつも恵介さんが言っていた言葉です。
「『やりたいことやろう』と思いました。恵介が『芸人なれや』と言って、よく笑ってくれていたのが後押しになりましたね」(安田さん)
発災の翌年、安田さんは芸人の道へ。徐々に仕事は増えていきましたが、震災のことだけは、話せずにいました。それを変えた転機は、知り合いの住職の言葉でした。