仮設住宅から100キロ離れた漆器店へ 伝統守るため今も続く車内泊

芳春さんはもともと、仮設住宅から100km離れた輪島市内で漆器店を経営していた。だが地震で店が全壊し、輪島塗の器や工芸品はほとんどが売り物にならなくなった。
大家芳春さん
「こんなの700、800万とか、こんなのは1000万円以上しますね」
今は輪島塗の伝統を絶やさぬよう、客から依頼を受け、被災した倉庫などから工芸品を回収し、保存に努めている。
仮設住宅からの移動にガソリン代がかかるため、週5日、輪島市内で車中泊をせざるを得ない。
Q.一晩中(エンジンを)かけておくんですか?

大家芳春さん
「寝るときに止める。こうやって寝るわけ。これが簡易トイレ。寒いので、この中で。今までみんなが営んで紡いできた物もそう、人間もそうやけど、そういうものが一瞬にしてダメになる」
「友達が出ていく中、一人で苦しかった」去年中止された成人式を待ち望む若者
2024年12月はじめ、高さんの美容室に一人の若い女性が現れた。
田谷綾香さん(20)。1年前、輪島市で行われる成人式に出席する予定だった。だが、地震で式は中止に。それが今年、改めて開催されることになったのだ。当日は高さんがヘアメイクを担当することになっている。
高さん
「今回、どういうふうにしたい?」

田谷さん
「(震災)前は髪の毛もっと伸ばしてたから、成人式用に。震災で成人式ないと思って切っちゃった」
高さん
「(前撮りの写真を見て)素敵。飾りは一緒に考えたやつだよね。良かった、使ってもらって」
田谷さん
「久しぶり友達に会えることと、みんなの成人式の衣装を見られることで嬉しい」

田谷さんは震災前、両親と妹、家族4人で輪島市の市営住宅に暮らしていた。だが、地震で建物は傾むき、道路も寸断。
家族で中学校に避難し、半年間そこで暮らした。
田谷さん
「1か月近く(髪の毛を)洗えなかったので」
高さん
「雨水で洗ったりしたもんね」
田谷さん
「井戸水で洗った」
父の田谷滋さんは…
父・滋さん
「ダンボールハウスのダンボールベッドに寝る生活で、人もいっぱいおるから厳しい生活でした」
子どものころから仲良くしていた友達のほとんどは、震災以降、輪島を離れてしまった。

田谷さん
「友達がみんな出ていく中で、一人だけだったので苦しかった。町がどんどんなくなっていくのと、することがないので、気晴らしができない」