■Bの再犯に弁護団の一人「世間に申し訳ない。結局、救えなかった」
一方、Bが再犯した背景を別の角度から見る人物がいる。コンクリ詰めの裁判でBの弁護団のひとりだった伊藤芳朗弁護士だ。
伊藤芳朗弁護士
「Bはもともととても優しい子だったですね。だけれども親とのすれ違いが重なっているという不幸がありました」
Bはコンクリ詰め事件を起こす前から親子関係で問題を抱えていたと指摘する。
伊藤芳朗弁護士
「Bはすごくお母さん思いだったのに、お母さんが彼のそういう気持ちに気づけてあげられなくて、すれ違いが生じる中で、どんどんどんどん親子での諍いが大きくなっていった。Bの父親は家族をおいて出ていってしまっていますから、母親が父親の分も自分が役割を果たさなきゃという考えがあった。母親としての優しい部分で接するのではなく、厳しい接し方をする方がいいんだと勘違いした面はあったと思います」
コンクリ詰め事件での服役後も、親子関係は改善しないまま、もとの環境に戻ってしまった。
伊藤芳朗弁護士
「Bは出所後、とても反省するとともに、二度と過ちを犯さないように頑張るんだっていうことは言ってはいました。出所後また母親のもとに帰ったんですが、すぐに親子の間でうまくいってないという話もあった。それがとっても気がかりでした」
Bは満期出所したため、仮出所が受けられる生活や医療などの公的サポートは得られず、いわば社会に放り出された格好だった。伊藤弁護士は担当弁護士がもっとBに関わることができたはずだとして、再犯したことについて「世間に申し訳ないと思います。結局、救えなかったという。残念な気持ちです」と悔やんだ。

再犯事件での判決で東京地裁の菊池則明裁判長は、「今度こそ本当の意味での再出発、人生のやり直しを期待しています」とBに語りかけた。だがBの更生をさまたげた妄想については、最後まで裁判で議論されることはなかった。Bは府中刑務所を出所した後、自宅に引きこもり、社会から隔絶した日々を送った。被害者遺族への償いも、人生のやり直しも果たせないまま、生涯を閉じた。

3回目は、ほかの加害者たちのその後と、Bの孤独死から浮き彫りになる刑務所の矯正教育の課題と出所後の支援について考える。
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