松本さんの長女(事故当時 高校生)
「12年も経てば、大抵の人間は成長するし周りも当たり前のように自分中心の、自分のための人生を歩んでいくのに、自分だけがずっと子どものまま取り残されたような気持ちになります。
何度気持ちを切り替えようとしても、ずっとその日のまま、その時の自分から抜け出せないような感覚になって、自分が惨めに思えます。父が生きていたら自分の人生はもっと違っていたのかもしれない、という思いを抱いてしまうことが多々あって、それが辛いです。

自分の努力不足で未熟なまま、歳だけ大人になってしまったのにそれを事故のせいにしようとしている自分が許せないと思います。そもそも、事故が起きなければ、こんな感情を抱かなくて済んだのに、とも思ってしまいます。

クリスマスだから、25日だから、とその日だけ特別な感情を抱いたりすることはなく、12年間ずっと毎日、心の底にそういう感情があります」

時間の経過とともに感情に蓋をすることができるようになっても、味わった絶望や悲しみが完全に癒えることはありません。松本さんも、命日になると“夫がいなくなった事実”を突きつけられるといいます。それでも、自分たち遺族と同じような思いをする人が二度と出てほしくないと自身の体験を語り続けています。

松本里奈さん
「被害者になるかならないかは選べない。でも“加害者になるかどうかの選択は自分自身ができる”ことを多くの人に伝えたい。日常を失ってから気づくのではなく、日常を失う前に…手のひらにまだある状態の時に、年齢や立場でできることは違うけれど考える機会をもってほしい」