オリジナルドラマに挑むことで磨かれる“作り手”としての力

――オリジナル作品の醍醐味はどんなところにありますか?

野木 オリジナル作品は全てがゼロから始まります。プロデューサー、ディレクター、脚本家、そして役者さんと作品を作るうえで、オリジナル作品じゃないと使わない筋肉みたいなものがある。原作モノの面白さはもちろんありますが、それが大半を占める時代になったために、今は脚本家もプロデューサーも、オリジナル作品を作る力が失われつつある気がしています。

土井 オリジナル作品を作るときに、制作者それぞれの全人格というか、今まで生きてきた経験の全てを出し合って勝負しないといけない場合があるんです。だからこそ、ドラマを一緒に作る人には、自分をさらけ出せる信頼感がないといけないなと思っています。

野木 最近は再び、オリジナル作品を作る流れが出てきているように感じますが、今後もその波に乗る方が出てきたらいいなと願っています。

――そんな体当たりの制作のなかで、お互いにすごいと思うところはどこでしょうか。

野木 こんなに穏やかかつ、才能あふれる監督は、映像業界になかなかいないと思います。今回、スタッフさんたちも「土井さんがやるなら」と率先して参加されたと聞きました。そういった人格や人望って、作品に携わるにあたってすごく大切なんだなと改めて思いました。

土井 野木さんはとにかく根性がある(笑)。自分が納得いくまで、絶対に妥協しないんです。そして、はっきりと意見を言う人なので、僕はとても仕事がしやすいです。僕たちの仕事には正解がないので、ないものは「ない」と野木さんが明確に判断してくれることで、ぼんやりとしていたテーマがちゃんと見えてくるんです。

野木 連続ドラマの全話脚本を初めて手掛けたのが土井さんとご一緒した『空飛ぶ広報室』で、デビューして間もないころでしたが、そのときから結構はっきり言っていて(笑)。でも土井さんは、はるかにベテランなのに、同じ目線でしっかり話を聞いてくださったことをよく覚えていますし、打ち合わせを重ねるなかでたくさんの学びをいただきました。