自民党支持層の“半数以上”が理解できない「企業・団体献金」のゆくえ
先の通常国会で野党から“ざる法”と酷評されながらも成立した改正政治資金規正法。政策活動費は残したまま、10年後に領収書を公開するなど、およそ国民の理解が得られるものとはならなかった。成立後の世論調査(24年7月)で、この法律では“政治とカネ”の問題の再発防止には「ならないと思う」人が76%にのぼった。
衆院選で惨敗し少数与党となった石破総理は、年内の政治資金規正法の再改正に意欲を示すが、容易ではない。
立憲民主幹部が「唯一最大」という争点が「企業・団体献金」の扱いだ。自民党は年間の収入総額のうち10%程度が企業・団体献金で他党と桁違いだ。この重要な資金源を維持したい自民党は、企業の政治献金を認めた1970年の最高裁判決を根拠に「我々は禁止より公開だ」と主張している。
一方、野党は「30年前の政治改革で廃止が決まったのに、いまだに政党交付金と二重取りしていることはおかしい」と批判(立憲・野田代表)し企業・団体献金禁止を主張している。さらにもうひとつの疑念は企業献金は政策が歪められる、影響を与えるのではないかという論点だ。石破総理は国会審議で「献金で政策がゆがめられたとの記憶はない」と繰り返すが、その根拠が乏しい。


法案に企業・団体献金禁止を「盛りこむべき」との世論は6割を超える。自民党層に限っても56%となっていて、企業献金をめぐる国民の理解は広がっていない。
野党全党が連携して、企業・団体献金禁止を自民党に迫れるかというと、野党も一枚岩ではない。ここでも国民民主党が、野党案は禁止の対象から政治団体を除外していることから「抜け道ができる」として賛同していない。
今後、この「企業・団体献金の禁止」が法案に盛りこまれるかは、こうした国民民主の動向、そして世論の動向がカギを握りそうだ。
TBS政治部・世論調査担当デスク 室井祐作
【12月JNN世論調査の結果概要】
●石破内閣の支持率は42.1%(前回調査より3.2ポイント上昇)、不支持率は52.4%(前回調査より4.9ポイント下落)
●政党支持率は、自民党28.2%(前回より3.6ポイント上昇)、立憲民主党8.5%(前回より4.3ポイント下落)、日本維新の会4.0%(前回と変わらず)、国民民主党8.8%(前回より0.3ポイント下落)
●国民民主党が主張する年収「103万円の壁」を178万円に引き上げることについて「賛成」61%(前回より5ポイント下落)、「反対」17%(前回より3ポイント下落)
●不倫を認めた国民民主玉木代表について「代表を続けても良い」が57%、「代表を辞任すべき」が35%
●今後の国民民主党の立ち位置について「自公の連立政権に加わる」が16%、「政策ごとに連携する相手を選ぶ」が52%、「ほかの野党と連携して政権交代をめざす」が23%
●政治資金規正法の再改正をめぐり、「企業・団体献金の禁止」を「法案に盛りこむべき」は64%、「盛りこむ必要はない」は25%。自民支持層に限っても、「盛り込むべき」56%、「盛り込む必要はない」34%。
●国民民主党が主張する原発の新増設に「賛成」は36%、「反対」は51%
●国政選挙や自治体選挙でSNSや動画サイトの情報を「大いに参考にする」が6%、「ある程度参考にする」が37%、「あまり参考にしない」が33%、「全く参考にしない」が23%
●12月2日から「マイナ保険証」に移行することに不安を感じるかどうかについて「大いに感じる」が25%、「ある程度感じる」が34%、「あまり感じない」が25%、「全く感じない」が13%
【調査方法】
JNNではコンピュータで無作為に数字を組み合わせ、固定電話と携帯電話両方をかけて行う「RDD方式」を採用しています。
11月30日(土)、12月1日(日)に全国18歳以上の男女2418人〔固定811人、携帯1607人〕に調査を行い、そのうち41.5%にあたる1003人から有効な回答を得ました。その内訳は固定電話454人、携帯549人でした。
インターネットによる調査は、「その分野に関心がある人」が多く回答する傾向があるため、調査結果には偏りが生じます。
より「有権者の縮図」に近づけるためにもJNNでは電話による調査を実施しています。無作為に選んだ方々に対し、機械による自動音声で調査を行うのではなく、調査員が直接聞き取りを行っています。固定電話も年齢層が偏らないよう、お住まいの方から乱数で指定させて頂いたお一人を選んで、質問させて頂いています。