「何になりたいかっていうよりかは、私になりたいっていうのが強いです。気づいたら絵描いたり、踊ったりみたいなのやってるから。すべていれて表現者。」

山口市出身のぴよくん。
絵や写真、動画制作、モデル、ダンサー。様々な顔を持ちます。独特の世界観をSNSなどで発表しています。

この日は個展にむけて準備を進めていました。


「死ぬためにどう生きるかっていうのは常に考えてることなんで。自分がいなくなったあとに、何を残せるかじゃないですけど。それを一つ一つ考えながらやってる気がします」

個展の会場は保育園のころまで住んでいたひいおばあさんの家。思い出の場所に、これまで描いた絵、集めた本、空間展示など、ぴよくんの歴史を詰め込みます。

「この古民家だったりもそうなんですけど、ここに生きてた人たちがいたみたいな。自分は骨になって灰になっちゃうけど、物はそのまま残るものだから、思い出は大切。」

ただ、彼女には忘れたい思い出もあります。

中学生時代、人とうまくかかわれず不登校に。高校にも通いましたが17歳で妊娠。シングルマザーになります。誰にも頼れなかったぴよくんは広島県にある母子支援施設に保護されました。

「自由はなくて、ずっと監視されてる状態。とにかく人との関わりを一気に遮断されたって感じですね。」

苦しい毎日の中、絵や写真に没頭します。それをSNSに発表することで、新たな世界が広がり始めました。

「今の自分を日記にして残す感覚で描いてました。気づいたら私の表現とか絵を見てくれる人がどんどん増えていって、人と関わることを一切しなかったのが、いっきにするようになった感じ。」

施設で暮らしながら高校にも通い、准看護師の資格を取得したぴよくん。6年後、施設を出ました。

「ぞわぞわする」

個展には、広島や島根から訪れる人の姿がありました。

個展におとずれた人
「独特な感じですね。まねできない。」
「一つ一つがすごい思いがこもってるのかなと思って、涙が出そうになりました。」
「(被写体として)自分の中の感情とかも表現してくれて、ほかの人にはない表情だったり。」自分の人生が絵に出てるようなところが魅力的かなと思います。」

多くの人が、ぴよくんの作り出す世界にひたっていました。

ぴよくんは訪問介護の仕事をしながら二人の子供と幸せな日々を過ごしています。

子どもたち
「(お母さんの絵)見たことある、僕には到底理解できない。あれくらいなら僕でもかける(笑い)。」
「(普段のお母さんどんなひと?)怒りんぼ(笑い)」

ぴよくん
「日常をすごす、カフェに行ってコーヒー飲んだり、朝起きて仕事に行って帰ってくる、みんなが送ってる日常って当たり前だけど、当たり前じゃない。」


当たり前の生活がどれほど貴重なものだったのか。

「母親としてだったり、社会人として、とか大人だから、ということでカッコつける人になりたくなくて、自分らしく生きる人になりたい。」


「悲しみだったり、怒りだったり、喜びっていうのは全部アートで。自分自身が作品なんです」

自分をさらけ出し表現を続けるぴよくん。


その世界は、見る者を引き付ける唯一無二の光を放っています。