電気・ガスを使わない炊飯器 デザインの重要性と意義とは
開発者に話を聞くため、本社を訪ねると、案内されたのは脇にあるコンクリートの実験室。

タイガー魔法瓶 村田勝則さん:
こちらが「魔法のかまどごはん」という商品。特徴は、新聞紙1部があれば、ご飯が炊ける。
新聞紙9枚で3合炊飯できるという。その炊き方は…

丸めた新聞紙を2つの穴に交互に投入し、火をつけることを繰り返す。
タイガー魔法瓶 村田勝則さん:
最初は1分半間隔で投入して火をつけていき、この後、燃焼が進むと、後ろから煙突効果で熱い空気が後ろから流れていく。新聞紙をいかに燃焼室の中できれいに燃やすか。そのための空気の流れを作る投入口、吸気口の大きさと、後ろの排気口のサイズ、すべてモデルを作りながら導いた。
さらに、先人の知恵も生かしている。
タイガー魔法瓶 村田勝則さん:
最初はゆっくり火をくべていく、それが昔の人の知恵で「はじめチョロチョロなかパッパ」と昔から伝わっているご飯の炊き方。はじめチョロチョロが1分半。なかパッパ1分と間隔を短く火力を上げていくという炊き方をしている。
約35分でご飯が炊き上がった。村田さんは「すごく粒がしっかりしていて、噛めば噛むほど甘みが出てくる」という。

「魔法のかまどごはん」は発売1年で、当初の計画の4倍以上の1万4000台を販売した。
タイガー魔法瓶 村田勝則さん:
災害に遭ったときのように電気・ガスが使えないときでも温かくておいしいご飯を食べてもらいたいという思いで開発した。「何かあってもこれがあれば食事ができる」という安心をお届けしたいと思っている。

試作品は70以上。試行錯誤を繰り返して開発した「魔法のかまどごはん」は、今回「グッドフォーカス賞(防災・復興デザイン)」を受賞した。
企業にとっても、デザインの重要性は高まっているという。タイガー魔法瓶のデザインチームのリーダー、今井克哉さんは…
タイガー魔法瓶 今井克哉さん:
デザインは顧客がまず触れていただく一番の接点。顧客目線に立った、顧客のためのデザインが重要。見た目ももちろん、時代としては環境に優しい商品も必要。時代の趨勢に合わせたものを作り続けていくということがデザインの使命。
グッドデザイン賞を主催する日本デザイン振興会の深野弘行理事長は、デザインの意義について…

日本デザイン振興会 深野弘行 理事長:
競争力であったり、企業の社会的な価値を高めるものであったり、企業の社会的責任を果たすものであったり、非常に多様な意味を持っているものだと思う。
そしてデザインには「社会課題を解決する力」があるという。
日本デザイン振興会 深野弘行 理事長:
グッドデザイン賞は、まさに出発点みたいなものなので、いろんなアイデアやデザインの芽が出てきて、それが発展し、少しでも社会を住みやすい、良いものにしていく。