■「プロセスのIT化」は“デジタル化”ではあるが“DX”ではない
ーーデジタル化と言われると、いまの仕事はそのままでその中の一部を例えばペーパーレスにするなどという置き換え、省力化でコスト削減というふうになりがちだ。しかし、本当のデジタル化は違うのか。
そうですね。やはり目的は何かというところだと思うのです。もちろんコスト削減はITだと思います。DXの目的は、デジタルを通じてユーザーの顧客体験をいかに上げるかというところに尽きるので、目的を見失ってはいけないと思うのです。プロセスのIT化はデジタル化ではあるのですが、DXではないと思います。
ーーどの会社でも経験があると思うが、もともとある部局の中にデジタル部のようなものを作り、その部局の中のデジタル関係の仕事を一手に引き受けるような組織改変はよくやっている。これはデジタル化を本当に進めていることにはなってないのかもしれない。
そうですね。我々もそうですが、企業はいろいろな事業体のもとでひとつの収益になっているので、強みもあれば弱みもあると思います。企業全体のすべての力をどうやって結集するかということを考ると、やはり横断的にDXを行っていかないと力を発揮できない時代になってきていると思います。
ーーDX体験で何を実現するかということを考えたときに、いままでの仕事のやり方では実現できないことがたくさんある。組織の作り方を変えなければいけないということなのか。
正解、不正解を導き出すのは難しいのですが、私も日々アメリカの本社や各国のメンバーと話していますが、組織がいかにフラットにできて、DXで非常に重要なのが若い人の声をいかに吸い上げるかなのです。このデジタル変革というのは、デジタル人材の方がよほど私たちよりわかっているわけです。いかに若い人の声を吸い上げるかということが非常に重要ですが、どうしても縦割りになるとなかなかその声を吸い上げにくい傾向にあるのかなと思います。
ーーそういう意味でもデジタル人材を育成していくということが大事になってくる。
ものすごく大事だと思います。いまのZ世代は生まれた時からデジタルに触れ合っているので、感覚は全く違うと思います。
(BS-TBS『Bizスクエア』9月10日放送より)