トランプ氏再登板で変わる世界 マスク氏は外交でも無視できない存在

トランプ氏の再登板はアメリカ外交の方向性を変え、世界情勢を一変させる可能性がある。

注目されるのは、ロシアによるウクライナ侵攻への対応だ。

トランプ氏
「皆、私が戦争を始めると言うが、私は戦争をやめさせる」

大統領選の勝利演説でこう述べたトランプ氏。

今年9月にゼレンスキー大統領と会談した際にも、プーチン大統領との関係性を強調し、停戦を主導する構えを見せていた。

トランプ氏(9月)
「私はプーチン大統領と非常に良好な関係を築いている。もし私が大統領選で勝てば、すぐに問題を解決できる」

プーチン大統領はトランプ氏の当選を歓迎する。

プーチン大統領(7日)
「この場を借りて、彼がアメリカ大統領に選出されたことを祝福したい」

プーチン大統領は、トランプ氏がウクライナ危機の終結を目指すと発言したことは「注目に値する」として、対話に「応じる用意がある」といいきった。

これに対して、警戒感をあらわにしたのがゼレンスキー大統領だ。

ゼレンスキー大統領(7日)
「私はトランプ大統領が迅速な解決を望んでいると信じている。しかし、私は早期終結には損失が伴うと確信している」

ゼレンスキー大統領のこの発言には理由がある。今年4月にアメリカメディアが報じた、トランプ氏が示したとされる戦争の終わらせ方だ。

ワシントンポスト(4月7日より)
「トランプ氏はウクライナに圧力をかけ、領土の一部を放棄させることで戦争を終わらせることができると語っている」

停戦について、アメリカの外交に詳しい明海大学の小谷哲男教授は…

明海大学 小谷哲男教授
「基本的にはウクライナにより多くの譲歩を求めることになると思います。今もう既に占領されている領土に関しては軍事力ではなくて、その後の和平交渉後の外交交渉で取り返すべきだと言っている(共和党側の外交アドバイザー)グループがいます」

日下部正樹キャスター
「非常に悪い前例になってしまう気もしますけど」

小谷教授
「まさに自分がピースメーカー(仲裁人)として、この戦争を止めたというその実績を作りたいということだと思いますし、やはり今の国際法の基本は、力による現状変更を認めないということですけれども、おそらくそれはトランプ氏にとっての優先課題ではないのだと思います」

そして、選挙戦でトランプ氏を全面支援し、勝利宣言でも持ち上げられた実業家のイーロン・マスク氏にも注目が集まっている。

マスク氏率いる衛星通信サービス「スターリンク」が、ウクライナの戦場で使われているためだ。

小谷教授
「彼(マスク氏)もプーチン氏との個人的な関係があると言われていて、しかも彼は米軍にもスターリンクを供給していますから、米軍の通信の大きなインフラを提供している。米軍の秘密をもしかすると、マスク氏がプーチン氏に流しているのではないかという懸念もあります」

群を抜くテクノロジーを有するマスク氏は、外交でも無視できない存在となっている。

中東パレスチナ自治区ガザでの紛争にも、トランプ氏の再登場は変化を与えるとみられる。

日下部キャスター
「トランプ氏の立場は、圧倒的にパレスチナよりイスラエル支持ですよね」

小谷教授
「従来、ムスリム票はほとんど民主党の候補に流れていたのですが、今回トランプ氏に流れたということで、パレスチナ側の人道支援、あるいは民間人の保護というものも無視できなくなる可能性は否定できないと思います。完全にイスラエル一辺倒ということではなくなるかもしれません。イスラエルに譲歩を求めるということがありうると思います」

来年1月の就任を前に、早くもトランプ氏の思惑を世界が緊張して見守っている。