「じんじんソング」や突如バズったSNS ユニークな選挙スタイルとは

松原氏の選挙スタイルは、選挙カーでの活動にも特徴がある。「ジンジンジン 松原仁」という軽快なメロディ。大田区や目黒区、そして前回対象だった品川区に住む人なら、一度は聴いたことがあるのではないだろうか。この「じんじんソング」に陣営は絶大な効果を感じているといい、まだ選挙権を持たない子どもでさえ、松原氏の名前を覚えるほどだという。

このような地道な選挙活動に加え、今回SNSも追い風となった。近年、SNSを利用しての選挙戦はメジャーであるが、松原氏の投稿は、特に反響の大きさが際立つ。これについて陣営に聞いてみると、きっかけは「偶然」のものだったという。一般の“国会ウォッチャー”によって偶然SNSに投稿された松原氏の論戦の動画が、60万回以上再生されるなど大きく拡散。これをきっかけにSNS上で松原氏への注目が跳ね上がったと陣営は分析する。公示日を前に投稿された決意表明は、なんと1万いいねを記録。公示前の1か月間にされた選挙活動に関する投稿では、平均約7000いいねを獲得するなど、注目度の高さが伺える。街頭活動中にも支援者から「投稿を見た」と声を掛けられるなど、陣営も反響を実感するほどとなり、SNS戦略をさらに強化することへと繋がった。偶然注目を浴びたSNSが起爆剤となり、無所属の壁を乗り越える一手となったように思う。

結果、松原氏は当選。2位以降の比例復活を許さないほどの票数を獲得した。地盤である大田区では、次点のほぼダブルスコアを得票する安定の強さ。一方、新天地である目黒区に着目すると、大田区に比べ、2位との差は縮まる。それでも、目黒区票の約10%にあたる12000票の差をつけて勝利した。

今回の衆院選は、候補者だけでなく、有権者にとっても怒涛の勢いで展開された。さらに新しい区割りとなったことで、馴染みのない名前が並び、投票先を迷う有権者も多かったのではないだろうか。「偶然」あの場所で見た、「偶然」名前を聞いたということが、いつも以上に大きな意味を為したように思う。そして、一票に繋がる偶然を生み出すため、様々な手段で展開された選挙戦が明暗を分けたと感じている。