放送と配信それぞれの特性を活かした戦略を構築

 デジタル時代において、放送と配信のバランスは多くの放送局が直面する課題だと思います。WOWOWではどのようにお考えでしょうか?

山本 これは本当に重要な課題です。現在、WOWOWは約240万人の加入者を持つ放送サービスと、成長中の配信サービスを展開しています。放送サービスは、主に50代以上の長期加入者に支持されています。一方、若い世代の新規獲得には、配信サービスが重要な役割を果たすと考えています。

ここで重要なのは、放送と配信それぞれの特性を活かした戦略を立てることです。放送は、これまで通りの単一商品として維持します。一方、配信では多様な商品設計が可能です。例えば、サッカーだけのパッケージや、音楽ライブ専用のサービスなど、お客様のニーズに合わせた柔軟な提供ができるのです。

 若い世代へのアプローチについては、どのようにお考えですか?

山本 若い世代、特に10代、20代の方々に、いきなり放送サービスに加入してもらうのは難しいですね。しかし、配信を通じてWOWOWのコンテンツの価値を知ってもらえれば、将来的な加入につながる可能性があります。

そのための一つの戦略として、NetflixなどのOTTプラットフォームとの協力も進めています。

例えば、「ゴールデンカムイ」の映画版をNetflixで配信することで、より多くの人にWOWOWの作品を知ってもらう機会を作っています。これは、WOWOWの認知度向上と、ドラマ版への誘導を狙ったものです。

 その戦略に、若者ではない私もまんまとハマりました(笑)。

山本 それはありがたいですね(笑)。まだ始めたばかりの取り組みですが、手応えは感じています。

ただし、これは一つの試みに過ぎません。今の業界は本当に変化が激しい。米国のメディア企業もこの数年で戦略をガラリと変えました。今年の戦略が来年も正しいと言い切れる時代ではありません。

常にお客様の動向を見ながら、様々な手を打っていく必要があります。そうでなければ、この変化の激しい時代に生き残ることはできないでしょう。