■「人間のことは二の次、それが共産主義的兵器作りの発想」
中国の『99式戦車』。車高が低くコンパクトな中国の主力戦車だ。その内部の映像を見ると、極めて狭い空間に兵士が乗り込み、窮屈そうに砲弾を装填しては、砲撃の度に反動で兵士がのけぞり、壁にぶつかっている。
この中国『99式』が参考にした旧ソ連製の主力戦車『T-72』とアメリカの戦車『M1エイブラムス』の室内空間を比べてみた。
車体の大きさもアメリカ製が一回り大きいが、居住スペースは、アメリカ製が3倍近い。かなりゆったり作られ、乗組員の快適性は一目瞭然だった。この違いに、西側諸国と、共産圏の国との兵器を作る際の設計思想の違いが表れているという。
元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「中国は旧ソ連を手本にしている。ソ連の武器作りの発想は効率第一主義なんです。例えば、戦車の車高を低くする。これは敵の弾が当たりにくい。その発想で戦車がコンパクトになった。そこに3人乗れば、1人のスペースは狭くなる。それで当時ソ連では身長制限があったらしいです。170センチあったら戦車に乗れない。人間のことは二の次、それが共産主義的兵器作りの発想。民主国家だったら人間工学というのがあって、気持ちよく戦えるように作る。
(中略)人の命を軽視する。はっきり言って、任務のためには人の命は犠牲にする。こんな戦車は西側には無いです。狭い空間で耐えて戦えっていう発想です」
自民党国防議連事務局長 佐藤正久 元外務副大臣
「ウクライナでの戦闘を見ていて、ロシア軍の戦車はよく燃えている。ロシアの装甲が薄いとは聞いていましたが、こんなに横が薄いのかと。(装甲を薄くすれば軽く、速く走る。さらに安く作れる)そのうえ、砲塔の乗組員の周りに弾薬を積んでいる。だから薄いボディを貫通した弾が、引火しやすい。日本や欧米の戦車は、人が乗る空間と弾薬の置き場所は区別されている」
兵士の命を守ることが勝利と言う考え方の西側と、兵士よりも国家の勝利を優先させる中国ロシアの考え方差が、兵器の差になり、強さの差になっているというのだ。
しかし、そうした兵器よりも深刻な弱点を人民解放軍は抱えているようだ。
■一人子政策のツケ…「戦死はその家系の終わり」
古来、戦争は“最終的には頭数だ”といわれる。つまり人口が多い国は強いのだ。ところが、人口ではインドとトップを競う中国が、兵士の数となると話しが違うようだ。
アメリカ戦略国際問題研究所 エドワード・ルトワック上級顧問
「人民解放軍の海軍や空軍は、兵士が一人っ子で構成された人類史上初の軍事組織。歴史上全ての戦争は、いわゆる跡継ぎ以外の男子に頼ってきた。中国の家庭において家系の継続は非常に重要だが、兵士が一人っ子だと“戦死”はその家系の終わりを意味する。それで中国は人があふれているのに軍事面では深刻な人手不足。人民解放軍は入隊希望者が少なすぎて、一番重要なマンパワーが不足している。どれだけお金を使って多くの素晴らしい武器を持ったとしても、それを使って戦う人間がいない。」
この意見は極端すぎるが、一人っ子の弊害は、別にあるというのが渡部悦和氏だ。
元陸上自衛隊東部方面総監 渡部悦和氏
「一人っ子は小さい時から甘やかされてるから軍隊の厳しさに耐えられない。それがひとつ。それから、一人っ子はわがまま。組織の中に入っても協調性が全くない。これが軍隊では大問題」
自民党国防議連事務局長 佐藤正久 元外務副大臣
「中国では子供は小さな皇帝、“小皇帝”と呼ばれていて、おじいちゃんおばあちゃんから甘やかされて育っていて、そんな子たちに厳しい訓練や、同じことを繰り返しやらされることは耐えられませんよ」
(BS-TBS『報道1930』 9月12日放送より)