耳慣れない用語「トリボヌクリエーション」が起きるタイミング
そもそも指は、どうして鳴るのでしょうか。実は、ポキポキ音の原因はまだ完全には分かっていません。
2015年にオンライン科学雑誌「PLOS ONE」に掲載された論文によると、ポキポキ鳴る現象(専門用語で「トリボヌクリエーション」)は、関節を引っ張った時に、関節内の圧力が下がることで関節液の中に「気泡が生じる」から起きると証明しました。これは、機械工学などで問題になることが多い、液体中に泡が生じる現象「キャビテーション」と同じ原理だといいます。
従来の考えでは、気泡が生じた後に「気泡が弾ける」タイミングで鳴るとされていましたが、この研究が明らかにしたのは「気泡が生じる」タイミングで鳴るということでした。
意識して指を鳴らしてみると、指をひねった瞬間に音が鳴っています。
井尻さんは「もし、気泡が弾けて鳴る音だとすると、一瞬タイムラグが生じるはずですよね。けれど瞬時に鳴っていることもあり、私もこの論文の機序は正しいと思います」と話します。
さらに、一度鳴らした関節がしばらく鳴らなくなる経験をしたことがある人もいるかと思います。これについて井尻さんは「関節内に関節液の蒸気が充満して圧力が上がり、関節を引っ張っても圧力が下がらないために気泡ができないから、と説明できると思います」とします。