マイノリティの本音が爆発

2023年3月に東京で「まぜこぜ一座」の『歌雪姫と7人のこびとーず』という舞台があったので、見に行ってきました。「こびと」は、低身長の障害のある方ですね。昔は小人レスラーがプロレスの前座で試合をしてテレビで中継されたこともあったのですが、いつの間にか出なくなってしまった。「障害者差別じゃないか」とかいろいろな声があったのでしょうけど、逆に存在が見えなくなってしまう、ということになっています。映画ではそんな”タブー”を恐れずに、当事者が「私がこびとです。何か悪いですか、こびとと呼んで。別にかまわないのですよ」という態度です。僕らマイノリティではない人間は、過剰に慎重になってしまったりしますが、「もっと普通に話しませんか? 私達はこの世に存在しているのですよ」と訴えていく形です。

映画の冒頭で紹介される、舞台『歌雪姫と7人のこびとーず』。その打ち上げから、映画のストーリーが始まっていきます。みんなで楽しく飲んでいる最中に、座長の東ちづるさんが殺されてしまった……。となると、容疑者はここにいる人たちだけ。マイノリティの特性を持ったパフォーマーたち、放送局のプロデューサー、広告代理店社員、芸能事務所社長、この中の誰が犯人なのかを探す役が、ドラァグクイーンのドリアン・ロロブリジーダ。「まぜこぜ一座」の一員として活躍しています。ドリアンが犯人探しを始めると「私じゃない」「いや、あなたは東ちづるを恨んでいたはずだ!」。そんな形で、マイノリティ・パフォーマーたちの本音、疑問、それから実は内心にある怒りが爆発していく、という大胆なストーリーになっています。

ドリアン・ロロブリジーダさん=(C)2024一般社団法人Get in touch

〈ドリアン・ロロブリジーダさん〉
ドラァグクイーン。東京都出身。1984年生まれ。2006年冬に開催されたドラァグクイーンコンテストで初登場にして優勝。180センチのスレンダーなボディに20センチのハイヒールと巨大なヘッドドレスを装着し、圧倒的な存在感を放つ。数々のイベント、ファッションショーや企業講演、CM、映画、ドラマなどに出演。

レジェンド声優によるテーマ曲

この映画がすごいのは、鑑賞料金1500円にパンフレットが含まれていることです。いろいろなモヤモヤが残る、気になる。その議論の入口みたいなものは、パンフレットにいっぱい書いてあるはずです。さらにすごいのは、エンディングソング。

♪Get in touch 夢を紡いでたどりついた 穏やかな午後
そそぐ日差しに 眉をひそめるキミの しなやかな背に


歌っているのは、レジェンド声優11人。東さんが代表をしている一般社団法人「Get in touch」が「まぜこぜ一座」を展開しているのですが、そのテーマソングをレジェンドみんなが歌い、映画のエンディングソングにもなっているんですね。声優に詳しい人たちはすぐに、みんな誰か分かるんじゃないでしょうか。

参加声優:井上和彦・かないみか・坂本千夏・島本須美・関智一・高乃麗・日高のり子・深見梨加・松本梨香・三ツ矢雄二・山寺宏一(五十音順)

この歌は何度も聴いていて、いろいろなバージョンを知っているんですけど、今回のはいいなーと思いました。やっぱり、声優さんは表現力がすごいですね。東さんはこの映画を、「マイノリティの人たちの人権を大事にしましょう」と考えている人だけじゃなくて、多くの人たちに見てほしい、と話しています。

東:普段そういうことを意識してない、エンターテイメント好きな方に見てほしいですね。あと、ご家族で。子供たちにも安心して見てもらうことができるので。タイトルに「殺人」ってちょっとびっくりするようなタイトルですけれども、そんな大変なシーンはないし、流血もないですから。

神戸:何度も何度も、東さんが死んでいく役ですけどね。

東:グエー、グエーって言いながらね。ふふふふ。