百閒作品との出会いは明治大学の学生時代「最初は好みに合わなかった」
ー内田百閒作品との出会いは?
(原田大二郎さん)
「1963年のことです。明治大学に通っていたんですが、国語の先生が開口一番『君たちに内田百閒を紹介したい。ぜひ読んでほしい』と言ったんです。それで買って読んでみたら、どうも好みに合わなかった」
「それから、役者をやって10年くらい経った頃かな。改めて読み直してみたら、静かな染みわたるような作風の良さがやっと分かったんです。いつか朗読したいと思いながら時間が過ぎ、今回岡山で百閒を読むことになりました」
ー岡山の朗読会では、これまで坂口安吾や菊池寛などの作品を朗読されていますが、百閒の魅力は?
(原田大二郎さん)
「百閒の作品は、夢の中の物語ですね。百閒の師匠の夏目漱石の『夢十夜』のような作風に憧れがあったのかもしれない。随筆『阿房列車』の中にさえ、夢の中のような雰囲気を感じることがある」
「この『柳検校の小閑』にも、柳検校が三木に箏を教える最中に夢の中へ誘われるような場面がある。
それから、物語の構成に計算が行き届いているように思えて、百閒は『数学的な人』だと感じますね」