俳優の原田大二郎さん(80)が、小説「柳検校(やなぎけんぎょう)の小閑」を岡山市の寺で朗読します。

「柳検校の小閑」は、岡山市生まれの小説家・随筆家、内田百閒(うちだひゃっけん)によるもので、百閒の親友の箏曲家・宮城道雄を題材にしています。宮城道雄といえば、有名な箏曲「春の海」の作曲者としても知られますが、随筆家としても評価が高く、その随筆には百閒も登場するのです。

「その場で生まれてくる音が一番信用できる」朗読と箏が即興で共演

12月14日(土)、岡山市北区の蔭凉寺で、原田大二郎さんは、箏の生演奏とともに「柳検校の小閑」を朗読します。

原田大二郎さんにその魅力を聞きました。

ー今回朗読される作品は?

(原田大二郎さん)
「岡山出身の作家、内田百閒の『柳検校の小閑』を読みます。小閑というのは、『ちょっとしたひま』というほどの意味です。柳という検校(平安時代に作られた、荘園における盲目のお役人の最高位)が自分のお箏のお弟子さんに、ほのかな恋心を寄せるという話です。作品の終わりのほうで、関東大震災が起こります」

「内田百閒は夏目漱石や、芥川龍之介が絶賛した作家です。今年6月、『冥途』を、蔭涼寺さんで、読ませていただきました。百閒自身が箏の名手だったようです。有名な宮城道夫さんの弟子になって修業したようです」

ー原田さんは、「朗読とパーカッションの新世界」として、朗読と打楽器を組み合わせた公演をなさっていますが、今回は「箏」との共演ですね。

(原田大二郎さん)
「僕はいつも、パーカッショニストの佐藤正治さんと組んで、セッションすることが多いのですが、この作品は、『箏が必要だ』と考えて、香川県高松で琴を教えていらっしゃる木村西葉さんと、競演することにしました。箏は、日本古来の音楽で、静かな調べと、烈しい曲調を同時に持っている楽器です。『柳検校の小閑』には、ピッタリな楽器だと思っています」

「僕らは、いつも、簡単な打ち合わせをするだけで、演奏は、即興性を重要視しています。その場で生まれてくる音が、一番、信用できるのです。西葉さんは、三味線の名手でもあります。途中、三味線も演奏してくださると思います。僕、今から、ワクワクドキドキしています」

ー今回の朗読会では、高松市在住の箏奏者、木村西葉さんが作品にも登場する「残月」を唄い演奏するほか、雷鳴や雨風を箏で表現するなど物語の世界を彩ります。

(原田大二郎さん)
「百閒は親友の宮城道雄に箏を習い、相当の腕前だったといいます。『柳検校』には箏の音色が絶対によく似合う。立体的な舞台になると思います」