「自民党」支持層が“自民党に入れるのをためらう”

篠原キャスター:
支持政党別の比例投票先では、各党、支持固め自体はそれぞれできているようですが…

JX通信社・米重さん:
「自民党」支持層が比例投票先で自民党に入れるのは当たり前だと思うのですが、今回は結構な数の票が他党にこぼれています。このこぼれた票が他党を伸ばすことになっています。  

つまり「自民党」支持層が“自民党に入れるのをためらう”ということが、今回の選挙戦を大きく象徴している部分ではないでしょうか。

無党派層において今回一番大きい支持を得たのは「立憲民主党」です。これは他の調査でも全く同じような傾向が出ています。

無党派層は既存政党を支持する選択肢を持たない人たちですが、今回あえてどの政党に投票しようかというときに、野党第一党である「立憲民主党」に投票したということが読み取れるわけです。

今回、無党派層は大挙して「立憲民主党」や野党を支持しましたが、「国民民主党」も「維新の会」を上回る支持を無党派から調達しました。まさに全体として「自民党」の苦戦に繋がっていることがわかります。

篠原キャスター:
無党派の中で「自民党」の占める割合が少ないですし、また「自民党」支持層の中で他党に票を入れた人もいる。他党に流れた票の数は少ないように見えるかもしれませんが、非常に大きな影響があるのですね。

JX通信社・米重さん:
おっしゃる通りです。「自民党」の支持率は例えば「維新の会」や「国民民主党」と比べると何倍もあるわけですから、単純にその絶対値をそれぞれ置いたとき、かなりのボリュームになりますよね。

しかも「自民党」の支持層のボリューム自体が以前よりは減っているのです。時系列世論調査をみると、自民党総裁選によるブースト効果で一時的に政党支持率が引き上がったのですが、その後、選挙戦の議論を通じて支持率がじわじわと下がるというのが10月の傾向としてありました。

支持が減った上に、さらに残っている支持層も「自民党」に対する忠誠心が薄く、比例投票においても自民党が苦戦を強いられていることに繋がったと思います。

石塚解説委員:
「自民党」支持層が比例投票先で「立憲民主党」に入れている人もいます。野田さんが「立憲」の代表になったからでしょうか。

JX通信社・米重さん:
そのような側面もあると思います。よく「与党にお灸をすえたい」という人がいますが、まさに“お灸票”なのでしょう。

石塚解説委員:
自民党支持層は「比例は公明党」といわれているのに、票が少ないですね。

JX通信社・米重さん:
そうですね。小選挙区で「公明党」が立ったときに、「自民党」が応援のために「自民党」支持層をまとめようとするのですが、5~6割と歩留まり悪い。

かつ「公明党」に応援してもらった「自民党」の小選挙区候補はその恩返しとして「比例は公明党」と言っていました。

特に情勢が厳しい自民党の小選挙区候補は一生懸命「比例は公明党、比例は公明党」と言っていましたが、選挙が弱い人がいくら呼びかけたところで元々、歩留まりが悪い「自民」支持層が行くわけがないですよね。

なかなか片務的というか、「公明党」の方が自公連立に対して得票という意味ではかなり貢献している部分が大きいと思います。

篠原キャスター:
東京7区、丸川珠代さんが落選確実になりました。

JX通信社・米重さん:
丸川さんは「自民党」支持層を十分に固められず、また「公明党」の支持層も半分くらいしか支持を得られませんでした。無党派層にいたっては「立憲民主党」の松尾明弘さんに大きく水を開けられました。

やはり「自民」・「公明」の与党候補が選挙区で勝利しようとしたら、最低限、「自民党」支持層と「公明党」支持層はしっかりグリップしないといけません。

その上で無党派層で相手よりも多く票を取ることができれば、全体としてはかなりリードすることができるのですが…しかも丸川さんは今回、参議院から衆議院に鞍替えしての出馬でしたのであまり地域に根付いていなかったこともあるでしょう。