大会日本人最高記録更新も期待できる顔ぶれ

日本勢では森井勇磨(34、京都陸協)が、こちらの記事で紹介したように、序盤の下りで2分40秒台半ば、あるいは2分40秒台前半のハイペースで入る可能性がある。そのときに誰が追うか。

1人で追うよりも2人以上で追った方が、オーバーペースの不安なく追うことができる。会見に出席したケニア3選手は「お互いによく知っているし、ケニアで一緒にトレーニングをすることもある。高め合うレースをしたい」(キメリ)と話していた。一緒に森井を追う展開も期待できる。

日本勢では西山雄介(29、トヨタ自動車)が 、以前の記事で紹介したように、少しくらい速いペースでも付いて行く心づもりだ。会見では目標記録について「2年前の自分が62分15秒だったので、そこを最低目標として、それよりも速ければ、どれだけでも出したい」と話した。2年前は終盤に追い上げて日本人トップ争いを演じた(全体11位で日本人3位)。

日本選手では大六野と市田の旭化成勢にも注目したい。「2人とも自己記録(市田1時間00分19秒=日本歴代6位、大六野1時間01分32秒)を狙うわけではなく、冬のマラソンに向けての流れ」(岩井勇輝コーチ)の中で出場する。西山と同じ位置づけだ。

今季、レースで安定しているのは市田の方だが、9月の全日本実業団陸上10000mレース中に右足首を捻挫して、9100m付近で途中棄権した。「10月に入って少しずつ練習を再開した」(岩井コーチ)ばかり。本来なら日本人トップ候補だが、「1時間02分前後」が現実的な目標となる。

一方の大六野は、3月の東京マラソン(32位・2時間12分09秒)後はトラックを2レースを走っただけ。タイムもそれほどよくなかった。「本人がレースに合わせるために練習量を落とすのがイヤで、練習を積んでいくことを優先した結果です。ピークを合わせれば(10000mで)27分台はいつでも出せる」と岩井コーチ。

今回のハーフマラソンに向けても「練習のタイムも上がっているし、その中でも余裕をもってこなしている。夏には長い距離を走り込むこともできました」と、すごい記録を狙わずとも、良い状態で臨めるのは間違いない。

坂に苦手意識があるわけではないが、東京マラソンでは25kmで集団から遅れ始め、上りの35~40kmは17分28秒もかかった。「脚作りができていなかったことや、坂が課題と認識して、普段のジョグから起伏を多く走るようにしてきました。その成果を東京レガシーハーフで確認するのも目的の1つです」(岩井コーチ)

先行型の森井、第1回大会では終盤で追い上げた西山、坂の走りに注目したい大六野。昨年の第2回大会で近藤幸太郎(SGホールディングス)が出した1時間01分26秒が、今大会の日本人最高記録。どの選手も地力がアップしたことの証明として、できれば日本人最高記録を更新してほしい。

(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)