内定得るも働けず、特例措置からもこぼれ落ち

しかし、男性は内定を得ても入社できなかった。在留資格がない「仮放免」のままだったからだ。

「内定をもらえれば、自分が日本に必要な存在だと証明できる。入管はきっと在留資格を認めてくれる」。そんな思いで入管に在留資格を求めたが、認められなかった。理由を聞いても、「分からない」「教えられない」という回答だった。

内定をもらった会社に事情を説明すると、幸い、在留資格を得られるまで待ってもらえることになった。ただ男性の寂しさは募る。

入社同期のメッセージグループには売り上げ目標達成の報告や社員旅行中の写真などの様子があがっていた。

「すごく悔しいなって思う。悔しいですけど、一番は寂しい」。男性は入社できる日を夢見て、資格の勉強に励むしかなかった。

実は、去年(2023年)8月、日本政府は、「日本生まれ」の仮放免の子どもたちに、特例で「在留特別許可」をすると明らかにしたのだ。日本の小中高校を卒業した成人でも、「基本的に在特を認める」と。

それから、およそ1年後の今年9月、政府が外国籍の子ども212人に「在留特別許可」をしたと発表した。しかし、男性にはこの時も与えられなかった。すでに入社できないまま半年以上。「在留特別許可を得た子どもたちは、日本社会で活躍してほしい」という当時の法務大臣の言葉が、むなしく響いていた。