加藤姉妹ら各選手の特徴は?
ダイソーのメンバーには岩本監督が指導していた世羅高出身の選手が多い。加藤姉妹とムッソーニは20年の全国高校駅伝優勝メンバーだ。平村は彼女たちの2学年先輩である。
岩本監督は加藤姉妹について「小雪はスピードがあって軽快なリズムで走りますが、美咲は粘るタイプ。我慢が特徴です。小雪の方が先に強くなって、そこに美咲が追いついて来ました」と2人の違いを話した。
加藤美は一昨年のクイーンズ駅伝では、「一番調子が良いので、流れを作る1区」に起用された。スピードランナーが集まる区間で22位に終わったが、チームに欠かせない選手に成長した。しかし加藤小の出場が微妙になっている。7月に5000mの自己新を出したが、その後ケガがあり、「ぎりぎり間に合うかどうか。無理はさせたくない」という状態だ。
平村はキャプテンで、ダイソーの長距離区間(3区と5区)を任されてきた選手。昨年は前年より1分半もタイムを落としたが、今回も3区なら2年前と同じくらいの走りが期待できるという。
世羅高勢以外では竹原と垣内瑞希(23)が、主要区間を担う力がある。竹原は9月末の記録会5000mでチームトップ。平村と2人で1区と3区を担うと予想される。「体が大きく、練習を見るともっと走れていい。今後チームの柱となっていく選手。駅伝できっかけをつかんでほしい」と岩本監督は期待する。
垣内は順大出身のルーキーで、インカレでは10000mで10位ちょっと、という成績が多かった。3年時の日本学生ハーフマラソンは、学生トップ選手たちも多く出場する中で11位。「淡々と走る選手。練習でも長い距離が強いですね」という岩本監督の言葉から、5区か6区への起用が予想される。
4区でヒト桁順位に上がり、そこからどうキープするか
岩本監督は今回の目標を「昨年の順位を上回って、クイーンズ駅伝の出場権(16位以内)を取ること」と冷静に話す。そのためのレース展開を次のように考えている。
「3区で16位以内にはいると思います。そうすれば4区のテレシアでヒト桁順位に上がるでしょう。5区で少し落とすかもしれませんが、5区と6区でその位置をどう保つか、ですね。アンカーが重要になるかもしれません」
もしも6区が加藤美なら、一昨年の区間2位の快走と、昨年の4秒差の悔しい走りと、両方を経験したことを生かせるだろう。
岩本監督は4秒差でクイーンズ駅伝出場権を逃したことを、「夏合宿前にひとこと言ったくらい」だという。世羅高時代に秒差で優勝を逃したことが何度かあったが、そのときも同じだった。
「消極的だったね、とか、突っ込みすぎだったよ、という指摘はしますが、失敗した選手に追い打ちをかけるようなことは言いません。選手自身が一番わかっていることですから。ましてや実業団は大人ですから、指導者から言われてやるようではダメです。(4秒差だったことも)自分で考えて行動しないと。自分で原因を整理して解決するのがウチのスタイルです」
今年のダイソーは一昨年のように、ボーダーラインよりもはるか前を走る可能性がある。それができたときは、2年前のような勢いで快走した結果ではない。4秒差の失敗を各選手がしっかりと受け止め、1年間をかけて解決したことになるからだ。
(TEXT by 寺田辰朗 /フリーライター)