「胎児手術」で家族に希望 

 出産を決意した北村さん。希望を託したのは始まったばかりの新たな治療法でした。

 (大阪大学医学部附属病院・遠藤誠之医師)「脊髄髄膜瘤と出生前に診断されたご両親にとって希望になればと考えています」

 今年4月、大阪大学の遠藤誠之医師などの研究グループは、脊髄髄膜瘤を母親のおなかの中にいるうちに治療する国内で初めての手術に成功したと発表しました。

 方法はこうです。胎児の体が安定する妊娠25週目ごろに子宮を5cm程度切開、患部が見えるように胎児の位置を調整して脊髄が飛び出た部分の筋肉や皮膚などを縫合します。胎児の段階で治療することで、脊髄の損傷がそれ以上進むのをくい止めることができるといいます。阪大病院で胎児手術を行う遠藤医師は手術のメリットをこう話します。

 (遠藤誠之医師)「胎児期に手術することで、(神経の状況を)悪くなるのを止める。それを、今ある神経をできるだけ維持していこうというのが胎児手術の意義になるんですよね。生まれてからのサポートとかリハビリとか検査とか治療とかっていうのも非常に大切になってくる」

 北村さんは6月下旬にこの手術を受けました。脊髄髄膜瘤の場合、できるだけ脊髄の損傷を防ぐため、出産に適した時期に入ったらすぐに帝王切開で産むことになっています。胎児手術をすれば子宮を切開したことなどによる早産のリスクも高まるため、慎重に経過を観察します。

 (遠藤誠之医師)「(赤ちゃんの)こういう心拍を見てもポコーン、ポコーンって上がってるところがあるから、赤ちゃん元気ですよ~っていうふうな感じな。だから順調」