「強度行動障害」のあるTさん(48)の場合

 48歳のTさん。もともとは自宅で73歳の母親が1人で世話をする老障介護状態だった。ところが2年前、母親が突然、救急搬送された。診断は「肺がんの疑い」。息苦しさで声も出せない中、身寄りが一切いない母親は相談支援事業所の職員に「娘の今後を託したい」と懇願した。

 (せんなん生活支援相談室 嵯峨山徹子さん)「これがその時のメモなんですけど 筆談で部屋のここに銀行のカードが入ってますとか。(娘の)行き先が見つからない中で本当に無理されてここまで生活されたんだろうなと思います」

 搬送の5日後、母親は亡くなった。Tさんが1人取り残されることになると職員から話を聞いた山直ホーム。待機者の中から優先してTさんの入所を受け入れた。

 Tさんは施設で暮らす中でも時折、パニックを起こすことがある。取材した日、散歩していると突然、道端で横になってしまった。

 (Tさんに話す職員)「くつ履いて帰るで、はだしでは帰られへん。足痛いで、くつ履いて帰ろうか、ほんなら。痛いのせんといて、見てこれ血が出た、痛いなー。帰ろ、帰ろ」

 職員2人がかりの声かけで、次第にTさんは落ち着きを取り戻した。