■ 名店の看板と味を引き継ぐために

熊本県八代市本町(ほんまち)の人気焼き肉店「味道園(みどうえん)」

創業から54年、ずっと受け継がれてきた名物がこちら、ジンギスカンです。

柔らかくクセのない厳選された子羊の肉と、秘伝のピリ辛つけダレ。その相性はまさに絶品の一言で、この味目当てに日々多くの客が詰めかけていました。

しかし、そんな名店に廃業の危機が。岡本 康一さん 73歳。
先代の父親から2代目として46年間、店の味を守り続けてきました。

味道園 岡本 康一さん
「後継ぎがいないので、苦渋の決断というかな。仕方ないと言いますかね」

厨房に立つ体力も限界となり、2021年 9月、閉店を決意しました。しかし、そんな時に出会ったのが同じビルで飲食店を営む 竹﨑 恭平さんです。

せんべろ酒場 せんばんち 竹﨑 恭平さん
「味道園さんが辞められるって聞いて、訪ねて行ったのが最初の出会い」

その最初の出会いで意気投合したという2人。

竹﨑さん
「味道園という名前とジンギスカンの味をとにかく残したいという気持ちだったので、僕なんかが事業承継させてもらうなんておこがましいとは思ったんですが」

元々 味道園のファンだった竹崎さんの熱い思いに、岡本さんも事業承継を決意。しかし、親族ではない第三者がお店を継ぐことに対して何も思わなかったのでしょうか。

岡本さん
「葛藤はないですよね。継いでくださるという人が現れた。もう安心だけです」

この出会いに、引継ぎの支援をしている西田弁護士は…

弁護士法人Si-Law 西田 幸広 代表
「すごく運が良かったんだと思います。なかなかそんな出会いって無いんですね。赤字で廃業するなら確かに仕方ないんですけど、およそ6割の企業が黒字なのに後継ぎがないという形で廃業している」

中小企業の後継者問題は県内でも課題となっています。

熊本県事業承継・引継ぎ支援センター 田中輝明さん
「県下 7万社の事業所のうち、4割強が後継者不在、または未定という状況です」

後継者不足による廃業を防ぐため、現在、味道園のケースような、親族ではなく「第三者による事業承継」が進められていて、行政や弁護士たちも積極的に取り組んでいます。