自民党総裁選挙は決選投票の末、石破茂元幹事長が勝利しました。1日に発足する予定の石破新政権は、経済政策では岸田政権の路線を踏襲し、デフレ完全脱却をめざすとしていますが、『好循環』実現には高いハードルが待ち構えています。

総裁選では岸田路線継承を強調
総裁選の投票日が迫った25日、石破氏はわざわざ記者会見を開き、自らの経済政策について説明する場を設けました。この中で石破氏は、「岸田総理が進めて来た『成長と分配の好循環』をさらに力強く確実なものにしていく」と、岸田路線継承を強調しました。
決選投票を睨んで、岸田総理や旧岸田派の支援を得ようという思惑が明白ですが、石破氏自身が岸田路線に違和感がないことの表れでしょう。
石破氏は、「物価上昇を上回る賃上げを目指す」と岸田政権同様に明言し、最低賃金を2020年代中に1500円まで引き上げる目標も掲げました。
財政健全化についても、石破氏は元々「有事の備えた財政規律は、国家にとって必要」と、その重要性を認めつつも、「機動的な財政出動を最も効果的に行っていく」と、当面は『好循環』実現に重心を置く姿勢を示し、こちらも岸田路線に寄り添いました。
岸田路線の継承を明言したことは、少しづつ金融正常化を進め、金利のある世界と経済再生を両立させていくという金融政策の方向性も、基本的に支持しているということです。
金融所得課税強化は軌道修正
総裁選スタート直後に石破氏は、金融所得課税の強化について、「実行したい」と発言、総裁選の争点の1つとなりました。利子や配当など金融所得は、源泉分離課税制度によって富裕層には恩恵が大きいことから、石破氏としては、公平性の問題提起をしたのでしょうが、「貯蓄から投資という流れに逆行する」といった批判にさらされました。
その後、石破氏は「NISAを縮小すると言った意味ではない」などと防戦に追われ、25日の記者会見でも「貯蓄から投資への流れは一層加速していく」と、事実上、軌道修正を迫られました。
現実問題として、金融所得課税を打ち出せば、株価が下がることは明白で、NISAで投資を始めたばかりの「普通の人」にとっても痛手になるわけで、そうしたことに考えが及ばないところが、石破さんらしいと形容する向きもあります。