ではイランとの関係は?

深い関係があります。ヒズボラ誕生はイスラエルのレバノン侵攻がきっかけ、と述べましたが、そこで重要な役割を果たしたのがイランです。レバノンのシーア派武装勢力の結集を後押ししたのがイランの革命防衛隊だとされています。イランでは1979年のイスラム革命でできた政府が「反イスラエル」とともに「イスラム革命の輸出」を掲げていて、その”輸出先”として選ばれたのがレバノンでした。それもあってヒズボラとイランの指導部は同じイスラム教シーア派というだけでなく、反米・反イスラエルというスタンスも同じです。

イランは、アメリカやイスラエルと対立しつつも実際に戦火を交えるのは「イラン国外で、イラン以外のアクターが戦う」というのが基本方針です。そのイランにとって、イスラエルのすぐ北に位置し、強固な組織を持つヒズボラは国外における最大のアセットだと言えます。このため資金面でも軍事面でもイランはヒズボラを支援してきました。

この関係性からヒズボラは対イスラエルの軍事行動の際、レバノン国民への影響よりもイランの意向を重視すると指摘されていて、今回もイランの姿勢が重要になります。

ところでレバノン国民はみんなヒズボラを支持しているの?

いいえ、そんなことはありません。政界だけ見ても、レバノンにはイスラム教シーア派のヒズボラの他に、マロン派のキリスト教徒主体の勢力や、スンニ派のイスラム教徒の勢力、同じシーア派でもヒズボラとは別の勢力などがいて、それぞれ方針も思惑も違います。また首都ベイルートなどでは保守的な宗教勢力から距離を置く世俗的かつリベラルな市民も多くいます。

レバノンは2019年以来続く経済危機から抜け出せておらず、通貨も暴落していて、戦争は状況を悪化させるだけです。ただ政治も停滞する中で、イスラエルとヒズボラの戦闘をやめさせることができる勢力はレバノン国内には存在しないのが実情です。