その後、用水路を掘り下げる改修工事が行われました。末吉さんは「掘り下げてからは、浸水はほぼないですね。またあふれるのではないか、と思うことはありますけど」と話していました。しかし、渡辺教授は「対策工事は、最大でも100年に1度の雨を想定して行われる。1000年に1度の雨が降れば、過去20年以内に内水氾濫の被害があった場所は、間違いなく再び被害に遭う危険性が高い」と話します。
「なのに、ハザードマップ上に全く示されてないという点が、最大の問題。事前に『いざという時はこう行動しましょう』と話し合っておくためにも、一刻も早くハザードマップを作ってもらった方がいい」
◆江戸時代以前に造成された「ため池」が7割
ハザードマップの問題点は、下水道などが整備された都市部だけではありません。農村部では、「危険なため池」がマップ上に載っていないというのです。

農村部では、農業を営むうえで欠かせない水を確保するためのため池が各地にあります。福岡県内では実に4777か所。このうち7割は、江戸時代までに作られたと言われています。福岡県朝倉市では2017年7月の豪雨で、隣接する2つのため池(貯水量計7万4000立方メートル)が決壊。水が一気に流れ込んだ下流のため池も壊れてしまい、下流の住民3人が死亡しています。地域の住民は「農業用にため池は必要。複雑な気持ちだ」と漏らします。

決壊した原因は、流木や土砂が水の流れを塞いでしまったことでした。福岡県は、ため池から水が流れ出す出口を付け替え、木が引っかからない構造にした、と説明します。国は、決壊した場合に下流の住宅地に被害が出る恐れがあるため池を「防災重点農業用ため池」と指定し、各自治体で必要な点検・整備を進めています。














