子どもたちに落語で想像力を養ってほしい

今回の賢者は落語家の林家たい平氏。全国各地で子どもに落語を聞いて親しんでもらう落語会を開いている。

林家たい平氏:
落語って想像力でしか楽しめないですよね。お芝居と違って、カツラをかぶるわけでもないし、化粧をし直すわけでもないし、一人のおっさんが右向いたり左向いたりしてお喋りしているだけですよね。一番求められるのはやっぱり想像力なんですよね。

今の子どもたちって、僕が思うに想像力のエンジンを回す機会が減っている。それは大人たちが全部そういう機会を奪ってしまっているなと思うんです。それは豊かになったから。僕は豊かとは思ってないですけど、例えば動画で何でも見られる。

僕たちの頃って、絵本をお母さんが読んでくれる。挿絵だって途中にしかなくて、動くところを頭の中で想像するしかなかったじゃないですか。絵本はまだ絵があるからいいんですけど、母親の昔話とか全部うろ覚えで適当に喋っているんで、昨日となんか主人公の名前も違うなとか思いながら、それを自分の中で軌道修正しながら楽しむことができたじゃないですか。

今は便利になっちゃって、子どもたちは全部動画で全ての情報を受け入れているから、そこから想像しなくても楽しめちゃう時代に今は来ていると思うんです。想像力があることによって、僕はすごく人生が豊かになると思っていて、自分の頭の中のスクリーンに自分だけの絵を投影していく想像力を養うためには、落語っていうものが想像力のエンジンを回す一つのアイテムだと思っています。

なるべく子どもたちに落語を聞いてもらう場面をたくさん作って、例えば友達と喧嘩したときに落語の絵本を読んで、自分だけクスクス笑って、また明日学校行こうって思う力になるかもしれないし。よく子どもたちの前で言うんですよ、想像力のエンジンが回りやすくなると、落語を聞く力が増えるんじゃなくて、人生が豊かになる。

それこそSDGsもそうだよねって。地球環境破壊って何だろうと思ったときに、今君が捨てたこれがその先どこへたどり着いていくのかを想像すること。それもやっぱり想像力だ。いじめだって、自分がいじめている子どものお母さん、お父さんたちがそれに気がつく、どんな思いかな。いじめている子どもは、お父さん、お母さんが自分の子どもがいじめているって思ったら、どんな悲しい思いするだろうって。全てに想像力を巡らせることによって、少しずついやなことがなくなっていくんじゃないかな。

SNSだってそうじゃないですか。その言葉を発信して、受け取る側の気持ちを想像したら、そんな言葉はやめておこうって思うじゃないですか。その想像力がないから、自分の思いだけで押し付けていく。それは想像力がどんどんなくなっているからなんだと思うんです。

(BS-TBS「Style2030賢者が映す未来」2024年9月15日放送より)