■「温室効果ガスが私たちの気候を“生き地獄”に変える」
では、今回の災害についてさらに見ていきます。
パキスタンのレーマン気候変動大臣は「地球温暖化の結果です」と話しています。
パキスタンの中部では2022年5月に気温が上がり、51℃を観測したこともありました。北の方にある氷河でできた湖の一部が決壊し、洪水が起き、橋が崩落してしまいました。
パキスタンの北東側にあるヒマラヤなどには、7000以上の氷河があります。2022年は氷河の雪解けによる洪水が通常の3倍起きているということです。
パキスタンのレーマン気候変動大臣は「温室効果ガスが私たちの気候を“生き地獄”に変える」と述べています。しかし「パキスタン自体は世界のCO2排出量の1%未満」だと話しました。

井上貴博キャスター:
先進国のあおりを受けているということですが、異常気象で例えば中国では歴史的な干ばつになっているかと思えば、パキスタンでは大雨洪水ととんでもないことが世界レベルで起きています。
東京大学大学院准教授 斎藤幸平さん:
先ほどパキスタンで高温という話がありましたが、春先はものすごい干ばつが起きていました。干ばつで大地がカラカラになってしまうと土が水を吸収しなくなります。そうすると、モンスーンで雨が一気に降ったときに洪水になってしまう。ここに氷河が解けたという要因も重なりました。
これら全てが気候変動の影響です。つまり、気候変動の影響をもろに受けるのが、特に貧しい国であるパキスタンの人たちということです。ここに不正義が存在するのは、しっかり認識しなければいけません。
ホラン千秋キャスター:
気候変動の主な理由になるCO2を排出してるのは先進国なわけで、その影響を最も受けるのが途上国の皆さんです。私たちも気候変動の影響を感じ始めていたとしても、それと比ではないくらい大きな影響を途上国が受けていると思うと、日本やアメリカ、中国など先進国に住む私たちが一人一人意識を高く持たないといけないと思いますね。
井上キャスター:
この格差がどんどん加速すると住めない国になってしまいます。
東京大学大学院准教授 斎藤さん:
パキスタンの危機はこれで終わりではなくて、これから高温の季節がやってくるので、まず感染症の問題が起きます。そして畑が全部駄目になっていますので、食料危機もあります。
さらに、経済的な損失が1兆円と言われていますけど、パキスタンは元々デフォルトになりそうで政権が変わったりしている国なので、対外債務を払えなくなる。本当に大きな経済問題も含めてこれからも大変な状況ですね。

■先進国が"賠償"するという考え方
山内キャスター:
国連は今回の災害について、現状で数百万人が家を失い、学校や医療施設が破壊されたと報告しています。
井上キャスター:
パキスタンは人口が2億人くらいいるので、日本も先進国として技術や物資の提供が求められると思います。
東京大学大学院准教授 斎藤さん:
援助も大事ですが、先進国の影響を途上国に押し付けているという意味では、援助ではなく、私たちが悪いことをしているからそれを償うという"賠償"という形でもいいのではないかと思います。例えばパキスタンは借金がいっぱいありますが、そういう対外債務を少しキャンセルするとか、そのような踏み込んだ措置も検討しなければいけないのかなと考えています。
そうしないと格差がどんどん広がっていってしまうし、気候変動対策も納得する形で、世界で団結して進めていけなくなってしまうと思います。














