小説だからこそ描ける心情

——原作者として、映像化される作品をどのような視点で楽しみたいと思われますか?

自分はもともと映像の脚本から入っていて、映像で浮かんだものを文字にしていくという作り方が多いんです。ただ、原作をそのまま映像化すると、ドラマの枠に入りきらない部分も出てきてしまう分、ドラマでは原作にはないキャラクター性が付け足されていて、どういう風になるのかが楽しみですね。例えばドラマでは志波が多肉植物と会話するシーンがあるのですが、原作にはなかった多肉植物の使い方がされています。また、この『毒恋』という作品は恋以外の要素もあり、全然違う世界に住んでいた2人が、最後にはある場所で真のパートナーになるという構成なのですが、その場面の演技を楽しみにしています。きっとかっこいいです(笑)。

——原作の小説と、ドラマの違いはどのような点だとお考えですか?

原作はBLと法廷バディものの要素が半々くらいなんですが、内容が山盛りで30分枠では収まらないので、ドラマはどちらかというとラブコメが多めです。小説とドラマのどちらから楽しむのがおすすめかという点は、一長一短ありますが、小説の方が心情など細かく書かれている分、先に読むとイメージが固まってしまうかもしれないので、ドラマを先に見て、1週間待つあいだに小説で深く楽しむという形はいかがでしょうか。

——脚本と小説で、書き方や組み立て方などの違いはありますか?

構成自体は、小説も脚本も同じような感じなのですが、小説は基本的に視点が固定される一方、映像は視点が自由に変わるので、そこは違うと思いますね。例えばハルトが調査に行く際に、小説だと志波の視点で進むために調査のシーンは完全に伏せて、後で「ハルトはこんなことしていました」と種明かしします。それは、小説で頻繁に視点を切り替えると読者が混乱するからなんですが、映像では志波とハルトを交互に映しても、視聴者はついてこられます。