「恨むとかいう気持ちは消えないんだろうな」
午前11時、開廷。
「主文、被告を禁錮1年4か月に処する」
実刑判決を望んでいた千奈ちゃんの両親。ついたての奥で、両親の泣く声が響いた。
裁判長は、元理事長に対し、「安全確保に対する意識の欠如は甚だしく、園児の命を預かる保育者として厳しい非難を免れない。その刑の執行を猶予する余地は認められない」と指摘、禁錮1年4か月の実刑判決を言い渡しました。
また、元クラス担任には「基本的な注意義務を怠った」などとして、禁錮1年、執行猶予3年の有罪判決を言い渡した。

裁判長
「千奈ちゃんが生まれた意味は、両親を不幸にするために生まれてきたのではなく、幸せにするために生まれてきた。今回のような事件の教訓になるために生まれてきたわけではない」
判決後、会見を開いた千奈ちゃんの父親。
「元理事長が実刑だとわかったとき、何も考えられない状況でした。妻とは手を握り合いました。裁判長が少し言葉を詰まらせながら、感情的になりながら、私たちに声をかけてくれたことは、とても説得力があって、素直に私の中で受け止めることができました」
千奈ちゃんにかけたい言葉とは。
「裁判がひとつ終わったよ、と。元園長(元理事長)は実刑になったよ、と。先生(元クラス担任)も執行猶予が付いたけど、有罪判決で終わったよと。けど、それでよかったねとは言えないので、いつも謝っているので、それでも謝ると思います」
判決が言い渡された日から3日後。川崎幼稚園を運営する榛原学園の現在の理事長が、千奈ちゃんの両親のもとを訪ね、元理事長が控訴しない意向であることを伝えた。控訴期限の7月19日までに両被告は控訴せず、判決が確定した。
裁判後、初めて千奈ちゃんの両親の自宅を訪れた元クラス担任。両親からいまの心境を問われ、「元の生活に戻そうと努力している」と答えたという。
2024年9月4日、事件から2年を迎えた。
千奈ちゃんの父親
「8月31日、千奈の3回忌を行いました。和尚さんが来て、読み上げが始まった時に、私も含めて親族も涙を流した場面がありました」
「涙を流す頻度というのは、減っているとは思います。それは、私も、妻もです。でも、私も妻も毎週必ずは泣いていると思います。(泣くときは)私は、思い出と重なった時。『千奈ちゃん、家のこの場所でこういうことやってたな』とか、『ここ、千奈ちゃんとよく遊んだ公園だな』とか。そういうのを思い出したときに、ぐっとくるものがあります」
「妻は、次女がイヤイヤ期とかで、自分の思い通りにいかなくて泣いた時に、ギャー、ワーッて泣くんで、千奈ちゃんもきっとバスの中で、ワーって怖くて、泣いてたんだろうなって重なった時に、妻は感情を抑えきれなくなって、泣くことはいまでも多いです」
「悔しいし、裁判長も、この前の判決公判の時に最後、『恨まないように』と言われましたけど、そのときは、スッと入りましたけれども、やはり恨むとかいう気持ちは消えないんだろうなと強く感じました」
いまもなお、遺族の悲しみは消えない。
遺族は今後、元理事長や元クラス担任など、園の関係者を相手取り、損害賠償を求める裁判を起こす方針だ。