高校野球には試合中止の暑さ基準“なし”

特に問題となるのは夏場に集中している大会だ。
ことしも猛暑の中で行われた夏の甲子園。今回から新たな暑さ対策として、日中を避けて試合を午前と夕方に行う『2部制』を導入するなどしたが、試合中に足がつり、倒れ込む選手が続出。こうした熱中症疑いの選手は大会を通じて56人に上った。観客らの熱中症疑いは282人だった。
真夏の炎天下、熱中症のリスクはどれほどのものなのか。
熱中症の専門家で医師でもある中京大学の松本孝朗教授が、高校野球の地方大会の中で最も参加校が多い、愛知大会で調査を行った。
試合が行われる9つの球場のうち、3つに暑さ指数=WBGTを測定する機器を設置した。

中京大学 松本孝朗 教授
「スタンドのある大きな球場は、すり鉢状になっていて、熱がこもるリスクがある」
暑さ指数は気温や湿度などから熱中症のリスクを数値化したもので、「28」を超えると熱中症になる人が急増する。

「31」以上は命に関わるリスクが高まるとして、日本スポーツ協会は、「運動の原則中止」を呼びかけている。
日本サッカー協会はこの指針に基づき、2024年から暑さ指数が「31」を超えたら、ためらわず試合を中止するよう注意喚起を行っている。また、日本テニス協会は国際基準にあわせて暑さ指数「32.2」以上を中止の基準にしている。
一方、高校野球は違う。中止する暑さの基準がないのだ。

私たちが松本教授と調べた結果、6月下旬から7月にかけて3つの球場で行われた76試合のうち、68%の52試合が「運動は原則中止」とされる暑さ指数「31」を超えていたことが分かった。
中には、試合中の暑さ指数が「34」~「37」で推移し、球場内の最高気温が45.6℃に達した試合もあった。
選手
「最初グラウンドに入ったときにサウナにいるような。外よりもだいぶ密閉された暑さ、蒸し暑いというか、言葉では表せないぐらい暑かったです」
試合でたまった疲れが抜けず、その後の練習で熱中症になった生徒も。
選手
「足をつったり、体のけいれんがあったので、初めて(熱中症に)なったので大変怖かった」

日進高校野球部顧問 森啓介 教諭
「実際、高校野球の現場ではなかなか(熱中症になったと)言い出しにくい。言ったら『弱い』と思われてしまうとか、そういうメンタルに子どもたちはなってしまうので、大人が気をつけなきゃなという風には思います」