◆「見逃し」と「的中」 予測が難しいからこそ


その2日後にも再び九州北部に予測情報が発表されました。しかし、長崎県対馬市ですでに線状降水帯が発生した後で、この時は「見逃し」という結果に…。ただ、この後に予測情報が発表され、実際に福岡県や大分県などで線状降水帯が発生。予測情報は「的中」しました。

そもそも気象庁は、予測情報を発表しても線状降水帯が発生するのは4回に1回程度としていて、発表が始まる前から精度が課題とされていました。はからずも今回はそれが確認されたわけですが、福岡管区気象台はそれでも「情報を出すことに意義はある」と強調します。

吉田力主任予報官「線状降水帯が発生すれば、大雨災害の危険度が急激に高まる可能性があるという意識を持っていただいて、災害に対する備えの心構えを一段高くしてもらいたいです」

気象庁は、大雨のもととなる水蒸気の観測網を整備するなどして、予測情報の精度向上に努めています。予測情報は外れる可能性はあるものの、線状降水帯が発生すれば大きな被害が出てしまいます。情報をどう受け止め、どう活用していくのか?伝える側、そして受け取る側にとっても課題となっています。

◆災害情報の課題 まだ紙とホワイトボード!?


災害情報をどう共有し伝えていくのか、研究を続けているのが福岡工業大学の石田智行教授です。被害や避難所の状況などをデジタル化して災害情報を共有し、自治体の災害対応を支援するシステムの開発を進めています。

そのきっかけとなったのが、岩手県の旧滝沢村の職員だった2011年に経験した東日本大震災です。津波で被災した沿岸部の自治体に応援職員として派遣され、避難所の運営などに携わりました。この時、疑問に感じたのが、安否情報の把握や避難所の管理、支援物資の分配などの手法です。情報を電話で入手し、手書きのホワイトボードや模造紙などで共有する手法がとられていました。これでは一部の人しか見ることができず、重要な情報が埋もれてしまう恐れがあると感じたのです。

福岡工業大学・石田智行教授「デジタル化が進んでいないということを痛感しました。避難者や避難所の詳細を把握するためには、情報をデジタル化することで災害対策本部が詳細な情報をいち早く把握することが非常に重要であると実感しました」

石田教授が開発を進めている自治体向けの災害情報総合システムは、情報の「登録」「共有」「発信」の3つからなります。被害や交通機関、避難所、ライフラインの情報などをデジタル化して入力する「登録」。従来は紙で書かれることが多かった災害情報を災害対策本部の大型ディスプレイなどで「共有」。住民に伝えるべき情報を自動で抽出してインターネットサイトやSNSで「発信」。この3つを一つのシステムとして運用します。
自治体の予算が限られている中、災害情報を共有するシステムを導入できる自治体は限られるため、中身をオープンにしてどの自治体でも使えるシステムの構築を目指しています。