日本人の2人に1人は罹患すると言われている「がん」。治療には、強い副作用が出る抗がん剤が用いられることがあります。
こうした中、「患者の外見的な苦痛を和らげたい」と、鳥取県米子市にエステサロンをオープンさせた女性がいます。


今年3月、米子市にオープンしたエステサロン「ツキノアカリ」。

クレンジングや、オイルマッサージなどフェイシャルトリートメントで、顔のコンディションを整えてくれます。


記者 土江諒
「こうして顔を人の手でマッサージされる経験、本当に今までなかったが、包み込まれるようで安心感すごいですね」

中でも、女性専用のオールハンドトリートメントは、ある悩みを抱えた人も受けられるんです。

ツキノアカリ 伊藤容子さん
「オールハンドでがん治療中の方は施術させていただく。アピアランスケアって言葉があるんですけど」


アピアランスケア。
がん治療の抗がん剤の副作用から起こる、脱毛や色素沈着、乾燥といった皮膚の異常などに悩む患者を支援することを言います。

ツキノアカリ 伊藤容子さん
「実は私も14年前にがんの治療を経験して」

オーナーの伊藤容子さん。
14年前、会社勤めを辞め、看護師を目指し看護学校に通おうと一念発起した矢先、子宮頸がんが見つかりました。

ツキノアカリ 伊藤容子さん
「最初は、あーもう死ぬのかと思って、本当に日常からポンと違う世界に自分1人飛ばされた感じで」


伊藤さんは約5か月間の闘病の末、がんを克服しましたが、抗がん剤や放射線治療で、脱毛や肌のシミ・黒ずみなど外見の変化に苦しんだといいます。

ツキノアカリ 伊藤容子さん
「その時はすごく外に出たくなくなったので、誰にも会いたくないというか。そんな外見で人に何か言われたら嫌だなっていう思いがあった」


がん医療において、一般的に15歳から39歳までの年齢層の人たちのことは「AYA世代」といわれます。【Adolescent and Young Adult(思春期・若年成人)の略】
学業や就職、恋愛、結婚など様々なイベントが集中する時期です。

自身のがんとの向き合い方をSNSで発信する、大阪府在住の荒幡依里子さん39歳。


去年乳がんが見つかった荒幡さんもAYA世代のがん患者で、脱毛や皮膚炎など、抗がん剤の副作用に悩みました。

荒幡依里子さん
「病気ではあるけれども病人ではないって私は思っている。病人は病人らしくするのではなく、病気であってもオシャレを楽しんで、治療もしっかり頑張ってと言う風になって欲しいと思っているので、やっぱりアピアランスケアが大事だと感じている」

山陰のAYA世代のがん罹患者は、2019年では181人。全体の約2パーセントにあたります。

決して多くはない人数ですが、伊藤さんは、1人でも多くの患者に寄り添いたいと話します。

ツキノアカリ 伊藤容子さん
「苦しい思いとか辛い思いとかを、なかなか家族とか友達に言いづらい部分もあって、全部ため込んでしまう時もあったので、そういう思いも私で良ければ話をお聞きして気分も楽になっていただきたい」