夏休み明けの時期は「子どもの自殺」が増える傾向にあります。高校時代に自殺未遂を経験し、重度の障害を抱えた、作家でエッセイストの豆塚エリさんと「生きづらさ」を抱える子どもたちにできることを考えます。

夏休み明け 子どもの命を守るためには

豆塚エリさん(31)
「高校時代は自分のことが嫌いで、情けないと思っていた。本当にいっぱいいっぱいだった」

豆塚エリさんは高校生だった16歳のとき、飛び降りて自殺を図りました。地元の高校では文芸部の活動などに励んでいました。ただ、人知れず悩みを抱えていました。

豆塚エリさん
「授業を受けるのが怖かった。化学の授業のときに、先生にずっと『なんでわからんのや』とみんなの前で怒られた。次々に『ここはどうか?』『これは?』と言われる。何一つ答えられなくて、震えが出た」

成績が悪くなるにつれ、母親との関係も悪化。

豆塚エリさん
「『学校行きたくない』『きつい』と言った。母親が『熱があるの?』『いや、ない』『さぼって、勉強もできんで、なんのためにこの学校入ったの』みたいなことを言われる。『ああ、もう私に居場所がない』と思った」

学校でも家庭でも追い詰められ、自らの命を絶とうと、自宅のベランダから飛び降りました。一命はとりとめましたが、首の骨の神経を損傷。胸から下の感覚を失いました。

豆塚エリさん
「首の神経が切れてる。左手が麻痺が強くて、細かい動きはちょっと苦手」

しかし、障害を抱えて気がついたこともありました。

豆塚エリさん
「今まで全く人を頼るということができなかった。看護師さんや介護士さんのふれあいは、あたりまえのように人の身体に触れるし、世話をすることをいとわないし、『ありがとう』と伝えたらすごく嬉しそうにしてくれた。そこで初めて頼っていいんだなと思えた。

今は詩人・エッセイストとして活躍する豆塚さん。執筆活動と並行して、自分のような「生きづらさ」を抱える人に向け、全国各地で講演活動も行っています。

豆塚エリさん
「ふと気がついたのは、私は死ななくてほっとしていた。無価値でも生きていい。だから尊いと気づくことができた。若い方や生きづらさを抱えてる方にぜひ聞いてもらいたいし、死にたいとか消えたいとか自分は駄目だとか、そういう気持ちが少しでも薄らいでくれれば」

そして、夏休みが明ける前の8月22日。豆塚さんは地元の大分で講演会を開きました。

豆塚エリさん
「自分が生きづらいと思っていたのは、自分が悪いのだとずっと思っていた。そういった居場所というのが子どもには本当に少ない。自分の至らないところや欠点を認めて、上手に人を頼ることこそ、本当の自立だと今では思っている」

講演を聞いた人
「誰もがそういう考えを持っているんだろうなと思った。心に刺さる言葉がたくさんあった。話を直接聞いて、自分の考え方を見直せてよかった」

豆塚エリさん
「少し気持ちが楽になるとか、そういうふうに思う人がいてくれるということがわかると、自分の過去の肯定にも繋がる。自分が何かできるというのはすごく嬉しいし、そういう糧になれると生きてきた甲斐がある」