
今野実永さん「私の小さいころからの記憶の故郷って、すれ違う人がみんな知っている人なんで、あいさつするのが当たり前だし、みんなで協力して支え合う温かい集落だったというのがすごく記憶にあります」
8歳まで南津島で過ごした今野さん。中学生の頃に田植え踊りを経験し、地域の伝統が危機的な状況にあることを実感しました。
今野実永さん「これを私たちの代で終わらせていいのだろうかと高校3年間考えた結果、ここで一か八か継承のお手伝いをさせていただければという思いで東北学院大を受験しました」

大学に入学した今野さんは、民俗学を専門とする金子祥之准教授の門をたたき、今回のプロジェクトを立ち上げました。
故郷の大切な営みを自分たちで受け継ぎ、次の世代への橋渡しをしたいと考えています。
中心で踊る「鍬頭」の役を演じているのは、今野充宏さん。今野さんの父です。
充宏さんも、20年以上前、新人の担い手として、田植え踊りを習っていた一人でした。30分近い実演を終えた充宏さんは、次のように振り返りました。

今野充宏さん「足が立たない。本当はピンと片足で立たないといけない。でも立てない…。足腰が弱っていますね。20数年前、やっててよかったなあと思いました。だからこういういい仲間たちと過ごすことができますし、本当にあのときやっていてよかったなと思います」

三瓶専次郎さん「みんな60、70、80代というくらいだから、そういう人たちが絶えたとき思い出してもらって津島の芸をできるだけ継承していただければ。学生さんたちの意気込みがやっぱり我々を動かしたんだというふうに考えて本当に感謝しているところです」
今野さんの思いが地域の人を動かし、その地域の人たちの気持ちは、学生にも伝わっています。

参加した男子学生「これを自分がやるんだと思うとまだ不安がありますけど、やらなきゃいけないと思う」
参加した女子学生「こういうのは生活の中で生まれてきたものだと思うので、それをそのままの形で今回受け継ぐことができればいいなと思う」

長い間、故郷を形作ってきた伝統芸能。原発事故で止まっていた伝承が、少しずつ、動きだしました。
今野実永さん「絶対これはつないでいかないと。つないできたいろんな人の思いがいまここにある状態なので、私たちの代で途絶えさせるのは絶対にいけない」