平和願い、記憶を短歌に
それから2年後、ようやく満州からの引き揚げが決まり、遠藤さんたちは、船で日本に帰国。シベリアに抑留されていた父は、5年ほどで家族のもとに戻ってきました。いま、遠藤さんは、自らの経験を後世に語り継ぐ活動をしています。
遠藤さん「私たちの官舎の周りは高いレンガ塀で覆われているんですけど、そこを乗り越えて入ってきたんです」

そのひとつが、当時の記憶を短歌にして残すことでした。
「子ら売らず 引き揚げこし母 抑留に 耐へし父思ふ 70年経て」
この歌には、終戦後、日本に帰ることができず、苦しんだ両親への思いが込められています。

遠藤さん「やっぱり母は偉大だったなと。子どもを売らないで、若いのに、30代なのに、それを今になってしみじみと、父も母もいなくなってから大変だったんだなって」
遠藤さんは、世界から戦争がなくなることを願い、経験を伝え続けます。
遠藤さん「語り継がなくてはならないという使命感、責務。そうでなければまたこういうような時代が来ないとも限らない」
遠藤さんとの思いとは裏腹に、世界から戦争は、なくなっていません。パレスチナやウクライナでは、平和とは程遠い状況が続く中、日本は、終戦から79年を迎えました。