栃木県那珂川町の箱石シツイさん、107歳。今も現役の理容師だ。戦争で夫を失い、ハサミ1つで子ども2人を育てあげた。

箱石さんは今でも鮮明に覚えていることがある。召集を受けて家を出る日、顔中涙だらけにして幼い子どもを抱きしめていた夫。「貯金も何も全部使ってしまっていいから、どうか子どもたちを守ってほしい」。そう言い残され、伴侶を見送った80年前の記憶。

夫の戦死を知り、箱石さんは一時、子どもたちと後を追うことすら考えたという。「戦争」は、終わりを迎えた後も市井の人々を苦しめた。妻として、母として、箱石さんはどのように乗り越えてきたのだろうか。