「人類は愚かなんだけど、愚かなことするのと同じくらいのエネルギーで多少マシなこともする」

2021年、アメリカが公開した衛星写真。中国・新疆ウイグル自治区に巨大な物体がいくつもある。
環境シェルターと呼ばれる地面の構造物を隠すテントだとされる。通常の衛星写真ではそれ以上はわからない。しかし、日本が開発した『合成開口レーダー』で撮影すると…。これは、雲や遮蔽物に遮られることなく内部の様子を捉えることができる。するとテントの中に丸い円形のものが見えた。

これがミサイルの発射口だろうと小原凡司氏は言う。

笹川平和財団 小原凡司 上席フェロー
「土であれば周辺と同じく黒く映る。白い部分はレーダーが強く反射している。金属であったり非常に硬いコンクリート…」

つまり、衛星から見えた巨大なテントは長距離ミサイルの発射場所である可能性がある。そして、今中国にはこうした場所が急増している。それによって懸念されるのは核軍備を増強した中国が核ドクトリン(核戦略)を変更するのではないかということだ。
従来の中国の核ドクトリンとは、即ち

「先制不使用」・・・相手より先に使用しない
「最低限レベル維持」・・・国家の安全に必要な最低限の戦力
「非核兵器国への不使用」・・・核を持たない国には使用も威嚇も行わない

小泉准教授が世界の研究者と話したところ「核ドクトリンは変わらないだろう」というのが大方の見方のようだ。だが戸崎准教授は言う…。

広島大学平和研究センター 戸崎洋史 准教授
「そもそも中国の『先行不使用』というのが信用できるのかというところからあると思う…」

各国の核の保有数は前出の通りだが、実戦配備となるとアメリカ・1419発。ロシア・1549発だ。中国は2035年までに1500発の核を持つと計画している。
『第3の核時代』不安は募るばかりだ。だが、小泉准教授は、こうも言う…。

東京大学先端科学技術研究センター 小泉悠 准教授
「すぐに(核が)なくなるとか、すぐに人類が核の危険かあら脱するってことはないんですけど…、やれることはある。実際に冷戦時代、あれだけ困難な状況の中でも87年に中距離核を全廃したし、一時1万発を超えてた核弾頭の数を実戦配備分としては今1500発まで減らしてるわけです。人類は愚かなんだけど、愚かなことするのと同じくらいのエネルギーで多少マシなこともする…」

どうか、その“多少マシなこと”を人類に期待するほかない…。

(BS-TBS『報道1930』8月6日放送より)