“佐伯清剛”という名に感じるインスピレーション
──今の時代、人間関係の構築にはとても気を使う局面が多いこともあり、人の懐に入って“義”を貫くことが難しい局面も多いと思います。そんななか、佐伯が重んじている“義”が物語を左右しているともお感じになりますか。
たしかに、人間関係で考えると、佐伯にはかなり強引な面がありますよね(笑)。
「病院長命令だ」と部下に告げてむりやり物事を進めることも多々ありますし、暴君的な部分がある。病院長としては暴君と言えるかもしれません。でも、佐伯のそういった言動がのちのちどういう展開を見せるかという部分も含め、それがまたこのドラマのおもしろさでもあるんじゃないかなとは思います。
『ブラックペアン』のときは演出の影響もありましたけど、佐伯の描かれ方が独裁者のようだった気がするんですね。みんなで起立して拍手しちゃったり、大勢を引き連れて歩いたりね(笑)。
ただ、『ブラックペアン シーズン2』では、演出に西浦(正記)さんが入って雰囲気がかなり変わったと思います。西浦さんはすごく繊細というか…物語の見せ方が細やかで色っぽく、スムーズに入っていける描き方をされる。
同じフィクションでも、前作とは撮り方や物語の切り口がかなり違うのが、演者としてもすごくおもしろい。視聴者の皆さんにとっても、そういった演出面もおもしろさにつながるのではないかと感じますね。
──その環境において、『ブラックペアン シーズン2』で佐伯を演じるにあたり、内野さんが大事にされていることは?
ブラックペアンの謎や、天城と渡海がどう関係しているのかなど、終盤に向けてさまざまな秘密が解き明かされていきます。
このドラマにとって、野望に向かって進む佐伯の姿は重要な要素ですが、なぜそこまでして新病院を建てたいのか、なぜ医学界のトップに立つことにこだわるのか、そこに種明かしがありまして。
その先に進めていくためには、佐伯というキャラクターに説得力がないといけないなとは常々感じています。ですから、彼の夢や野望を作り物ではなく、“本当に欲しいもの”として届けたいんですね。
それと、このドラマは、高階をはじめ、いろいろなキャラクターが敵陣と味方に出入りしているわけです。佐伯は、その間を行き来しながら、清濁併せ呑む立ち位置といいますか。そういったキャラクターとして存在していたいと思っています。
非常に懐の深い人物だとも感じてて。そう考えると、“佐伯清剛”という名前そのものにインスピレーションをもらえるところがあるんですよ。剛腕を持った清くて力強い人。
たとえば、佐伯は、日本の医学界、特に心臓外科に対する志がすごく高い人だと思うんです。人の命を救うことに対する志を誰よりも大事にしている。
ただ、どこかギラギラしている部分は大事にしてほしいとプロデューサーからは言われておりまして(笑)、清い部分や温かい人間性があまり表に出ないようにはしています。
剛腕バリバリで前に突き進むエンジンは持っているからこそ、その奥の方にあるヒューマニズムを感じさせないようにはしたいんです。本音の見えない人物の方がおもしろいですものね。