永瀬貴規選手の強さの秘密

良原キャスター:
練習がまさに強さの秘密ということです。今回の試合の解説を務めた、リオ・東京オリンピックで金メダルを獲得した大野将平さんは「(自分の)“永瀬最強説”を証明してくれました。道場で隣で稽古していると、永瀬選手が休まないので、本当にイヤでした」ということです。この練習で培ったのが、どんな相手にも対応する“柳の柔道”です。
大学時代の恩師である岡田弘隆監督は「階級や国籍に関係なく、強豪選手には真っ先に稽古を申し込むのが日常。どんな場面にも対応できる“柳のような柔道”が持ち味に」ということで、時には100キロ級の選手と練習をしたりもするそうです。
そして今回の勝利のポイントについて野村忠宏さんは「徐々に自分のペースに引き込んで、一気に仕留めた」ということですが、改めていかがでしょうか。
野村忠宏さん:
圧倒的な爆発力で相手を制するのではなく、戦いの中でちょっとずつ相手の良さを消していくというか、状況判断しながらその条件に合わせて柔道を作っていきます。
そして蟻地獄のようにだんだん相手のスタミナを奪いながら追い詰めていって最後に仕留めます。相手からすると戦いづらいです。
井上キャスター:
世界が永瀬選手の戦い方を研究し尽くしてきている中で、永瀬選手は、相手の心が折れるまで待って、折れたところを一発で仕留めるという、必殺仕事人のような話をされていました。
野村忠宏さん:
日ごろの稽古で培った絶対的なスタミナに自信があるんですよね。だから“何分でも俺は勝負してやるよ。お前は付き合えるのか?”ぐらいの感じですね。
井上キャスター:
野村さんだったらどう戦いますか。
野村忠宏さん:
最初の本戦の4分で永瀬選手を投げて早く決着をつけたいです。4分で仕留められなかったら、しょうがないなと思います。
萩谷麻衣子さん:
永瀬選手の最も得意な技は何ですか。
野村忠宏さん:
永瀬選手は“大外刈り”や“足車”が得意です。相手選手と距離を取って、遠い位置から踏み込んで足をかけて、ひねり飛ばすような技です。これも彼の特徴的なもので、強い体幹がないとできません。柳のような柔らかさのほかに、相手を仕留めるときの剛の強さ、その瞬間のパワーもあります。

ホランキャスター:
野村さんは3連覇、永瀬選手は2連覇と、周りの選手に追われて研究される中でも強くなり続けることはどれだけ難しいことなのですか。
野村忠宏さん:
すごく難しいです。追われて研究される中でも強くなり続けるためには絶対的な技術力で日本人しか持っていない相手との間合いの取り方や相手のずらし方、自分の体重を使ってプレッシャー・圧力をかけるという、理にかなった柔道の上手さを持っていないといけません。
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<プロフィール>
野村忠宏さん
柔道家 柔道史上初のオリンピック3大会連続金メダル
弘前大学大学院 医学研究科
萩谷麻衣子さん
弁護士
結婚・遺産相続などの一般民事や、企業法務を数多く担当