サラサラッと読んだら間違えた

「支えていくことが使命だ」と言っている知事に、「人としてどうなんだ」。かみ合っていないですね。私自身のことも含めて思いました。文章を読むときに、サラサラっと読んでいないか。表面上の印象だけで判断してないか。それを、試験の問題を見る時に「使っている脳の位置が違うんじゃないか」という感覚とつなげてみると、もしかしたらテストを受けるように「文章をよく読もう」という雰囲気は、日常的に薄れているかもしれない、という気がしたんですね。

ちなみに、小学生の国語のテストも2問あったのでやってみたんですけど、何と両方間違えました。問題文にひらがなが多いし、なめていたわけですよ。サラっと読んで、ちゃんと読んでいないのです。何となく「こうだろう」「この程度かな」と。でも答えは違う。よく見たら「そりゃそうか」と思ったのですが。

僕はもう30年以上、言葉を書くことを中心に仕事をして給料をいただく仕事をやってきていて、言葉の遣い方やニュースの表現のプロでいるつもりなんですけど、なめてサラサラと読んだら全然だめでした。SNSの読み方も、みんなサラサラッと読んで、勝手に怒って怒りをぶつけているけれど、実は怒る対象じゃないかも知れない…。そんなことの繰り返しを、子供だけじゃなくて、大人もしていませんか。

馳さんのことは、いい例。災害対策が拙劣なのは否定できない状況で「石川県の被災者は大変だな」と思っていますけど、「この人たちを支えるために頑張るんだ」と言っていることについて、僕が見た時には「こんな差別はひどい」という言い方がほとんどだったんです。今は、「滞留」という言葉がよくないという言い方をしている人が多いんですけど、どうかなあ…。「滞留」という言葉よりも、やっぱり「何のために」「誰が」「どう言っているのか」ことを読み解く。大人も含めて、国語のテストのように読み解く作業が要るのではないか…というのが、小学生の学力テストをやって2問も間違えた感想です。全然だめでした。すみません。

◎神戸金史(かんべ・かねぶみ)

1967年生まれ。毎日新聞入社直後に雲仙噴火災害に遭遇。福岡、東京の社会部で勤務した後、2005年にRKBに転職。ニュース報道やドキュメンタリー制作にあたってきた。やまゆり園事件やヘイトスピーチを題材に、ラジオ『SCRATCH差別と平成』(2019年)、テレビ『イントレランスの時代』(2020年)、映画『リリアンの揺りかご』(2024年)を制作。