15か国が修正案に賛成 韓国から「異議」は・・・

ICOMOSが「佐渡島の金山」の概要を説明

注目の「佐渡島の金山」は27日の朝一番、委員会のその日最初の審議となりました。まずICOMOSが「佐渡島の金山」の概要を説明し、「追加の情報が必要」という事前評価に至った理由を説明します。

「佐渡島の金山」の審議がスタート

その後、開催国インドの議長が「委員国のブルガリアから決議文の修正案が出ています」と説明。会議場の大モニターに修正案(英語とフランス語)が映しだされたのですが、元々の決議文の「追加で情報が必要」という部分が赤字&訂正線が引かれ、新たに青い字で「世界遺産に登録」と書かれています。

先に説明したように、世界遺産委員会の審議は「決議文を作る」ことによって結論を出します。決議文の修正案を出せるのは委員国だけなので(自国が推薦する世界遺産候補のときを除く)、日本以外のどこかの国が「『佐渡島の金山』を世界遺産に登録する」という修正案を出すことがまず必要でした。ブルガリアが修正案を出してくれたことで、最初のハードルは乗り越えたわけです。

ブルガリアが「『佐渡島の金山』を世界遺産に登録」という決議文の修正案を提出して説明

続いてブルガリアの政府代表団が修正案について説明。同時に「なぜ『佐渡島の金山』が世界遺産にふさわしいか」についても説明していきます。さらに、ブルガリアの他にもこの修正案に賛成する委員国の国名が、決議文の中に青い字で加筆されていきます。

ブルガリア、ジャマイカ、ベルギー、カザフスタン、カタール、イタリア、ベトナム、ザンビア、セネガル、ケニア、ギリシャ、インド、ウクライナ、ルワンダ、メキシコの15か国を数えました。

修正案に15か国が賛成

「この修正案に異議がある国はありませんか?」

と、インドの議長が確認します。すべての委員国が修正案に賛成の意志を示さなくても、「異議あり」という声が出なければ、修正案は可決されます。

「異議ありませんね?」

と議長が再確認。委員国である韓国は発言を求めす、異議は出ません。そして・・・

「修正した決議案を採択します!」

と議長が宣言し、木槌で机を叩いた瞬間、「佐渡島の金山」の世界遺産入りが決定したのです。

「佐渡島の金山」の世界遺産登録決定後にスピーチする日本政府代表団

新しい世界遺産が誕生すると、その国の代表団が4分のスピーチを行うのが通例です。今回も日本政府代表団が英語でスピーチし、「特に朝鮮半島出身労働者を誠実に記憶に留めつつ、韓国と緊密に協議しながら『佐渡島の金山』の全体の歴史を包括的に扱う説明・展示戦略及び施設を強化すべく引き続き努力していく」と述べました。

日本に続いてスピーチする韓国政府代表団

異例だったのは、日本に続いて韓国政府代表団も4分のスピーチを行ったことです。決定後のスピーチは通常は世界遺産になった国だけが行うのですが、今回、韓国は特別に発言の機会を与えられたわけです。その中で韓国は、日本側の歴史展示などの対応を認めた上で、

「大韓民国と日本の相互合意を通じて関連する問題を解決しようとする意志を考慮すると、未来志向的な両国関係を促進するアプローチを取る必要がある。大韓民国政府は長い間、慎重に熟慮した末、佐渡鉱山を世界遺産に登録するための委員会の合意決定に参加することを決めた」と、合意した理由を説明。まさに両国政府間で事前の「相互合意」があったことがうかがえる内容でした。

「佐渡島の金山」の世界遺産登録決定後の日本政府代表団(中央が花角新潟県知事)

興味深かったのは、修正案に賛成したのが15か国だったこと。これに日本を加えれば16か国。もしも投票という事態になっても、修正案の採択に必要な有効投票数の三分の二以上(マックスは委員国の21か国すべてが棄権せずに投票した場合で、14か国以上の賛成)を押さえていたことになります。

日本の26番目の世界遺産となった「佐渡島の金山」

ともあれ、日本の26番目の世界遺産となった「佐渡島の金山」。

27日の審議では他にもたくさんの世界遺産が誕生したのですが、それらは次回のリポートで紹介したいと思います。

執筆者:TBSテレビ「世界遺産」プロデューサー 堤 慶太