輸送に決定的な弱点を持つ島国・日本

そして、現在の日本について堀川さんはこう話しています。

マイクを握ってあいさつする堀川惠子さん

堀川惠子さん
吉田さん、戦争が始まらなくても海峡をいくつか封鎖されるだけで、日本に船は入って来なくなりますね。そうすると、石油はどのぐらいもつと思います?

吉田礼嘉さん
ちょっと見当がつかないんですけれども…。石油…半年ぐらい?

堀川惠子さん
かなりいい線行っています。日本国が備蓄している石油は、時々によって変わるんですが、二百数十日ぐらいと言われています。だから、太平洋戦争開戦時よりも、我々の国はより厳しい状態に置かれていることは、数字からも明らかです。

堀川惠子さん
船に関しても、吉田さんが紹介してくれたように、当時は一生懸命民間の船員さんたちが命を賭けて日本のために物資を運ぼうと頑張ってくれたんだけれども、今、日本の船員がどのぐらいいるか。日本船籍の船に乗っている船員の90%以上は外国籍の方々です。「日本のために命をかけて物を運びます」なんて言ってくれる人は、いないんですよね。周りを全部海に囲まれている日本というのは、「戦争したくてしたくてたまらなくても、戦争のできない国なんだ」というのが、本を書いた私なりの大きな結論の一つです。

堀川惠子さん
だから、もちろん最低限の自衛はしなくてはならないし、準備をすることはしなくてはならないのだけれど、一番大事なのは「どう戦争をやらないで済むかを考えること」。それは、自衛隊とか防衛省だけにお願いすることではないですよね。お隣に物騒な国がいっぱいあって、ミサイルみたいなのが飛んでくるし、とても嫌なんだけれども、ただ単に戦って「あいつら悪い」「あいつら嫌だ」と言うだけでいいのか――そういうことも多分問われてくる。これを書いたときに私が思ったのは、「戦争できない国だな」「戦争やっても勝てない国だな」「じゃあどうしたらいいんだろう」。これをみんなに考えてほしいなと思って。

言われてみればもっとも、という気がします。敵基地先制攻撃の話もありますけど、その後はどうなるのか含めると、「日本は決定的な弱点を持っている」ということが実は前回の戦争の一番大きな教訓だったかもしれない。その点について、陸軍船舶司令部に光を当ててしっかりと浮き彫りにしたこの本は、本当に説得力がありました。